本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
取り戻せる可能性はありますが、確実に戻るという保証はありません。回収の可否は、賠償義務者を特定できるか、差押えの対象となる財産があるかに左右されます。方法としては、警察への届出と刑事告訴、起訴後の附帯民事訴訟か別の民事訴訟、財産を確保しておくための仮差押えがあります。不法行為による損害賠償の請求権は、原則として、損害と賠償すべき相手の両方を知った時から2年で時効により消滅します。
お金は必ず戻ってくる?
いいえ。刑事裁判で有罪判決が出ても、それだけでお金が戻ってくるわけではありません。判決などの債務名義を得ても、実際に取り戻すには、差し押さえられる財産が相手に必要です。結果を左右するのは主に二つです。ひとつは相手を特定できるかどうかで、ネット上のニックネームや他人名義の口座しか分からないと、誰に請求すればよいかが定まりません。もうひとつは相手に財産が残っているかどうかで、お金がすでに引き出されたり、いくつもの口座を経由して移されたりしていると、裁判に勝っても回収できないことがあります。
送金した直後で、お金がまだ引き出されていなければ、銀行と警察の通報の仕組みを使って流れを止められることがあります。ただし、これは被害者だけでできることではありません。金融機構及提供虛擬資產服務之事業或人員防制詐欺犯罪危害應遵循事項辦法第28条では、被害者本人が営業時間中にどこかの預金取扱金融機関の窓口へ行き、詐欺にあったことを伝えて誓約書(切結書)を書き、165に電話することができます。警察は2時間以内に来て受理しなければなりません(第28条第1・3項)。お金がすでに別の口座へ移されていれば、最初に受け取った金融機関が次の金融機関に通知して追跡します(第27条第1項)。資金が凍結されると、警察は48時間以内に、その口座を警示口座(取引停止措置を受けた口座)にするかどうかを確認します(第30条第3項)。届出が早いほど、止められる見込みは高くなります。具体的な手順は投資詐欺に遭ったら、まずやるべき5つのことをご覧ください。
お金を取り戻すための法的な手段は?
主な手段は、警察への届出と刑事告訴、起訴後の附帯民事訴訟か別の民事訴訟、条件を満たす場合の仮差押えの三つで、事情に応じて組み合わせて使えます。
| 手段 | 利用できる時期 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 刑事告訴 | 検察官か司法警察官に申し立てる | 刑事訴訟法第232・242条 |
| 附帯民事訴訟 | 起訴後から第二審の弁論終結前まで。ただし、第一審の弁論終結後から上訴を提起する前までを除く | 刑事訴訟法第487・488条 |
| 通常の民事訴訟 | 刑事事件の起訴を待たずに起こせる | 民法第184・185条 |
| 仮差押え | このままでは将来の強制執行ができなくなる、または非常に難しくなるおそれがあるとき | 民事訴訟法第522・523条 |
刑事告訴はどうすればできる?
犯罪の被害者は、検察官か司法警察官に対して、口頭または書面で告訴できます(刑事訴訟法第232条、第242条第1項)。
意圖為自己或第三人不法之所有,以詐術使人將本人或第三人之物交付者,處五年以下有期徒刑、拘役或科或併科五十萬元以下罰金(刑法第339條第1項)。
〔非公式要約〕刑法第339条第1項は、自分または第三者のために財物を不法に得る意図で欺いて、他人に財物を交付させる行為を処罰します。刑は5年以下の有期徒刑(台湾の有期の自由刑)、拘役、または50万台湾ドル以下の罰金で、罰金の併科も可能です。
公的機関の名をかたった場合、3人以上で行った場合、インターネットで広く一般の人に向けて行った場合などは、刑法第339条の4の加重詐欺罪に当たる可能性があります。詐欺罪は原則として親告罪ではなく、被害者が告訴しなくても起訴できます。ただし、配偶者、直系血族、生計を共にする同居の親族、その他五親等以内の血族または三親等以内の姻族の間で起きた詐欺は、刑法第343条が準用する第324条第2項により親告罪となり、犯人を知った時から6か月以内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法第237条第1項)。捜査中に必要があれば、検察官は、将来の追徴に備えて、被告(台湾では起訴前の捜査対象者もこう呼びます)や第三者の財産を差し押さえることができます(第133条第2項)。また、損害賠償などの請求権についてすでに執行名義を得ている被害者は、裁判の確定から1年以内であれば、没収物や追徴した財産からの支払いを申し立てることができます(第473条第1項)。実際にどれだけ戻るかは、事実関係と財産の状況によります。
刑事附帯民事訴訟とは?
犯罪で損害を受けた人は、刑事裁判の手続きにあわせて、被告人や、民法上賠償責任を負うほかの人に損害賠償を求める民事訴訟を起こすことができます(刑事訴訟法第487条第1項)。刑事裁判の中で損害賠償を請求できる台湾の制度です。起こせるのは、起訴された後から第二審の弁論が終わるまでで、第一審の弁論が終わってから上訴されるまでの間は起こせません(第488条)。捜査段階ではまだ起こせません。
- 証拠を共通に使える:刑事裁判で調べた証拠は、附帯民事訴訟でも調べたものとして扱われます(第499条第1項)。
- 裁判費がかからない:事件が複雑で、裁判所が決定で民事部に移した場合は、裁判費(訴えを起こすときに納める手数料)を納める必要がありません(第504条第1・2項)。訴訟費用のすべてが免除されるわけではありません。
- 注意点:刑事裁判で無罪、免訴、公訴不受理の判決が出ると、附帯民事訴訟も原則として棄却されます。請求した人が民事部への移送を求めた場合は、訴訟費用を納める必要があります(第503条第1・3項)。
請求できる相手は主犯だけではありません。複数の人が共同で他人の権利を侵害したときは全員が連帯して賠償責任を負い、そそのかした人(教唆者)や手助けした人(幇助者)も共同行為者として扱われます(民法第185条)。
仮差押えはどんなときに申し立てる?
お金の支払いを求める権利がある人は、将来の強制執行に備えて、仮差押えを申し立てることができます(民事訴訟法第522条第1項)。ただし、このままでは将来の強制執行ができなくなる、または非常に難しくなるおそれがあることが必要です(第523条第1項)。請求の内容と仮差押えが必要な理由は疎明しなければならず、裁判所から担保を立てるよう命じられることもあります(第526条)。附帯民事訴訟でも、仮差押えの規定が準用されます(刑事訴訟法第491条第10号)。
リスクも知っておきましょう。まだ本訴を起こしていない場合、相手(債務者)が求めれば、裁判所は期限を決めて訴えを起こすよう命じ、期限内に起こさなければ、相手は仮差押えの取消しを申し立てられます(民事訴訟法第529条第1・4項)。また、仮差押えがはじめから不当だったとして取り消されたときは、申し立てた側が、相手に生じた損害を賠償しなければなりません(第531条第1項)。
詐欺被害者向けの特別な規定は?
2024年7月31日に制定・公布された「詐欺犯罪危害防制條例」は、この条例でいう「詐欺犯罪」を、刑法第339条の4の罪、条例第43・44条の罪、そしてこれらと裁判上一罪の関係にある犯罪と定めています(第2条第1号)。通常の刑法第339条の詐欺罪だけでは対象になりません。対象となる被害者には、次のような特別な扱いがあります。
- 損害賠償を求める民事訴訟を起こすときや上訴するときの訴訟費用と、強制執行を申し立てるときの執行費用は、ひとまず納めなくてかまいません(第54条第1項)。
- 仮差押えや仮処分を申し立てるときに裁判所が命じる担保は、請求額の10分の1が上限です(第54条第2項)。
- 主な主張や反論が同じ被害者が多数いるときは、その中から代表者を選んで訴えを起こせます(第55条)。
- 法律扶助の要件を満たす被害者には、司法関係の職員や警察が、申請できることを知らせ、必要な支援をします(第52条)。
損害賠償を請求できる期限(時効)は?
不法行為による損害賠償の請求権は、原則として、損害と賠償すべき相手の両方を知った時から2年、不法行為の時から10年たつと、時効で消滅します(民法第197条第1項)。時効が完成した後でも、賠償すべき相手が利益を得ていれば、不当利得として返還する義務は残ります(同条第2項)。訴えを起こす、支払命令や調停を申し立てるといった手続きをとれば、時効を中断できます(第129条)。いつから数えるか、中断にどんな効果があるかは、請求の種類と事情によって変わります。
裁判に勝っても、お金が戻らないことがあるのはなぜ?
勝訴判決は強制執行をするための根拠であって、現金そのものではありません。お金がすでに引き出されていたり、海外に移されていたりすると、差し押さえられる財産は限られてしまいます。また、「被害金を取り戻してあげる」と持ちかけてくる人には注意してください。台湾の警察は、ハッカーや法律事務所を名乗り、費用を払えば被害金を取り戻せると誘う手口は、どれも二次詐欺だと警告しています。怪しい勧誘を受けたらすぐに警察に届け、被害の回復は正規の警察・法律の手続きで進めてください。
出典:台湾警察165全民防騙網の二次詐欺に関する注意喚起 ↗(公開2024年1月12日、更新2024年1月29日)。
相手の財産と請求期限の確認
相手の身元や財産の手がかりがつかめたとき、仮差押えや附帯民事訴訟を考えているとき、複数の被害者でまとまって請求したいときは、動く前に、手続き、費用、担保の必要性を一緒に確認しましょう。このページは一般的な説明で、個別の事件についての法的意見ではありません。
