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従業員による会社資金の流用は、業務上横領と背任のどちらになりますか?

職務上保管している会社の財物を自分のものにすると、業務上横領が問題になります。財物を保管していなくても、任された事務に背いて会社に損害を与えれば、背任に当たる場合があります。

更新日 2026-10-26

本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。

要点

従業員が仕事のうえで預かっている会社の金品を自分のものにした場合は、台湾刑法第336条の業務上横領罪(台湾での罪名は業務侵占罪)が問題になります。金品を預かっていなくても、任された仕事に背いて会社に損害を与えれば、第342条の背任罪(同じく背信罪)が問題になります。どちらも原則として親告罪ではなく、会社が告訴しなくても捜査・起訴の対象になります。例外は、当事者が特定の親族関係にある場合だけです。会社は刑事告訴とは別に、民法第184条に基づいて損害賠償を請求できます。疑いをかけられた従業員には、黙秘権や弁護人を選ぶ権利などがあります。

会社のお金の流用は、横領になりますか、背任になりますか?

分かれ目は、従業員がそのお金や物を「占有」していたかどうかです。保管を任されている現金を勝手に使い込むなど、仕事上預かっている会社の財物を自分の物のように扱えば、第336条の業務上横領罪が成立します。これに対し、財物を手元に預かっていなくても、職務上の決裁権限を使って任務に背き、会社に損害を与えた場合、たとえば請求額を水増ししたり、業者に便宜を図る見返りにリベートを受け取ったりした場合は、第342条の背任罪が成立し得ます。

横領罪には、不法に自分や第三者の物にしようとする意図が必要です。背任罪には、自分や第三者の不法な利益を図る意図か、本人(会社)に損害を与える意図が必要です。実務では、占有の関係、任されていた仕事の内容、具体的な行為からどちらの罪に当たるかを判断します。一つの出来事で両方の罪が問題になることもあります。

業務上横領罪はどんな場合に成立し、刑はどのくらいですか?

仕事で預かっている物を横領した場合は、6か月以上5年以下の有期徒刑(台湾の有期の自由刑)で、9万台湾ドル以下の罰金を併科されることがあります。公務上または公益のために預かっている物の場合は、1年以上7年以下の有期徒刑で、15万台湾ドル以下の罰金を併科されることがあります(刑法第336条第1・2項)。

未遂も処罰されます(第3項)。いつ既遂になるかについて、実務では、預かっていた物を自分の物にする意思が外に現れた時点を基準にしており、会社に実際に金額の不足が生じている必要はないとされています。これは実務上の見解なので、個別の事実に即した判断が必要です。

對於公務上或因公益所持有之物,犯前條第一項之罪者,處一年以上七年以下有期徒刑,得併科十五萬元以下罰金。對於業務上所持有之物,犯前條第一項之罪者,處六月以上五年以下有期徒刑,得併科九萬元以下罰金。前二項之未遂犯罰之。(刑法第336條)

〔非公式要約〕刑法第336条は、公務上・公益のために占有する物の横領を1年以上7年以下、業務上占有する物の横領を6か月以上5年以下の有期徒刑とし、それぞれ罰金を併科できると定めています。いずれも未遂を処罰します。

背任罪はどんな場合に成立しますか?業務上横領とはどう違いますか?

他人のために事務を処理する人が、自分や第三者の不法な利益を図る目的、または本人に損害を与える目的で任務に背く行為をし、本人の財産その他の利益に損害を与えると、背任罪が成立します。法定刑は5年以下の有期徒刑、拘役(短期の自由刑)、または50万台湾ドル以下の罰金で、有期徒刑・拘役と罰金を併せて科されることもあります。未遂も処罰されます(第342条)。

業務上横領と違い、背任罪は特定の財物を預かっていることを条件としません。問われるのは、任された事務について、信頼に応える義務に背いたかどうかです。たとえば管理職が決裁権限を濫用して特定の業者を優遇し、リベートを受け取った場合は、会社の財物を直接持ち出していなくても背任罪になり得ます。なお、台湾の証券交易法(証券取引に関する法律)に基づいて有価証券を発行している会社では、取締役や経営幹部(経理人)などの背任行為が、同法第171条の罪にも当たることがあります。最高法院刑事大法廷の2020年10月29日の裁定(108年度台上大字第2261号)は、一つの行為が同条第1項第2号の罪(通常の営業慣行に反する取引をさせる非常規交易罪)と第3号の罪(特別背信罪)の両方に当たるときは、観念的競合として重いほうの罪で処断するとしました。ただし、これらの罪が適用されるのは、同法により有価証券を発行する会社と、同条が定める立場の人に限られます。このページで扱う刑法第342条の一般的な背任罪とは、適用される範囲が違います。現行第171条第1項第2号は、同法に基づき有価証券を発行する会社の取締役・監査役(監察人)・経理人・従業員が、直接または間接に通常の営業慣行に反する不利益な取引を会社にさせ、重大な損害を与える場合を定めています。同項第3号は、その会社の取締役・監察人・経理人が自己または第三者の利益を図って職務に背く行為をし、または会社資産を横領し、会社に500万台湾ドル以上の損害を与える場合です。第3号の行為でも損害が500万台湾ドル未満なら、同条第3項により刑法第336条・第342条に基づいて判断します。

業務上横領や背任は親告罪ですか?会社が告訴しないと捜査されませんか?

どちらも原則として親告罪ではありません。検察官は犯罪の疑いを知れば、会社の告訴がなくても捜査し、起訴できます。

例外は、行為者と被害者が直系血族、配偶者、生計を同じくする同居の親族、またはその他の五親等以内の血族・三親等以内の姻族にあたる場合です。このときは刑法第338条・第343条が準用する第324条第2項により、親告罪となります。被害者が法人である会社の場合、会社そのものと従業員の間に親族関係はありません。従業員が社長や株主の親族であるだけでは、この例外は適用されません。

於直系血親、配偶或同財共居親屬之間,犯本章之罪者,得免除其刑。前項親屬或其他五親等內血親或三親等內姻親之間,犯本章之罪者,須告訴乃論。(刑法第324條,依第338條、第343條準用於侵占罪章及詐欺背信罪章)

〔非公式要約〕刑法第324条は、直系血族、配偶者、生計を同じくする同居の親族の間での犯罪について刑を免除できるとし、これらの親族やその他の五親等以内の血族・三親等以内の姻族の間での犯罪を親告罪としています。この規定は、第338条・第343条により横領罪の章と詐欺・背任罪の章にも準用されます。

従業員の横領に気づいたら、会社はどう対応すればよいですか?

業務上横領や背任は原則として親告罪ではないため、会社はまず管轄の警察か地方検察署に告訴・告発できます。あわせて、決裁記録、会計伝票、銀行の取引明細などの証拠をできるだけ早く確保してください。証拠が隠されたり、後からお金の流れをたどれなくなったりするのを防ぐためです。

民事・刑事それぞれの時効にも注意が必要です。従業員が捜査中に財産を処分してしまうと賠償を受けにくくなるため、仮差押えなどの保全手続きを申し立てるかどうかも検討してください。

横領や背任の疑いをかけられた従業員には、どんな権利がありますか?

刑事訴訟法第95条により、取調べの前に、疑われている事実と罪名、黙秘できること、弁護人を選任できること、自分に有利な証拠の調査を求められることを告げられます。

横領罪なら不法に自分の物にする意図、背任罪なら不法な利益を図る意図や会社に損害を与える意図があったかを、事実に沿って確かめます。問題の発端が業務上の判断や権限の範囲についての誤解であれば、任務に背く行為とその故意があったかも確認しなければなりません。会社に損害が出たというだけで、犯罪が成立すると決めつけることはできません。警察から出頭通知が届いた場合は警察の事情聴取に向けた準備もあわせてご覧ください。

刑事告訴と民事の損害賠償請求は、同時にできますか?

できます。刑事告訴と民事の損害賠償請求は別々の手続きです。会社は、故意または過失によって会社の財産権を不法に侵害した従業員に対し、民法第184条第1項に基づいて損害賠償を請求できます。刑事手続きの進み具合を待つ必要はありません。

同条第2項は、他人を保護するための法律に違反して損害を与えた場合にも賠償責任を負うと定めています。ただし、行為者が自分に過失がなかったことを証明した場合は、責任を負いません。

因故意或過失,不法侵害他人之權利者,負損害賠償責任。故意以背於善良風俗之方法,加損害於他人者亦同。違反保護他人之法律,致生損害於他人者,負賠償責任。但能證明其行為無過失者,不在此限。(民法第184條)

〔非公式要約〕民法第184条は、故意・過失によって他人の権利を不法に侵害した場合、善良の風俗に反する方法で故意に損害を与えた場合、他人を保護する法律に違反して損害を与えた場合の賠償責任を定めています。最後の場合は、無過失を証明すれば責任を負いません。

会社の資料保全と従業員の答弁

会社として告訴、証拠の確保、損害賠償を考えているときも、従業員として社内調査や警察・検察の通知を受けたときも、何かを話したり決めたりする前に、お互いの権利義務と取り得る手続きを確認しておくことをお勧めします。この記事は一般的な説明で、個別の事件についての法的意見ではありません。

会社として告訴や損害賠償を考えている方も、通知を受けて説明を準備したい従業員の方も、まず状況をお聞かせください。

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