台湾刑法第140条は、公務員が適法に職務を執行している場での侮辱を処罰します。憲法法廷の113年憲判字第5号判決は、公務妨害という主観的な目的があり、かつ職務執行に影響を及ぼすに足りる場合に公務員侮辱罪を限定しました。同条の「適法に執行する職務に対する公然の侮辱」(職務侮辱罪)の部分は、判決宣告日から効力を失っています。この要件に当たらなくても公務員個人の名誉を傷つける言論は、第309条の公然侮辱罪に当たる可能性があります。これは親告罪です。
職務中の公務員への暴言は必ず罪になるか
必ずしもそうではありません。憲法法廷の113年憲判字第5号判決によれば、刑法第140条の公務員侮辱罪は、その場での侮辱が公務妨害という主観的な目的に基づき、かつ公務員の職務執行に影響を及ぼすに足りる場合に限って、憲法第11条の表現の自由の保障に適合します。
判決理由は、侮辱的な言葉を発したというだけで、公務妨害の故意を当然に認定してはならないとも述べています。この罪が守るのは公務の執行であり、個人の利益を守る公然侮辱罪とは性質が異なります。
公務員が適法に職務を執行しているとき、その場で公務員を侮辱し、または適法に執行する職務を公然と侮辱した者は、1年以下の有期懲役、拘役または10万新台湾ドル以下の罰金に処する。(台湾刑法第140条の訳。職務侮辱部分は憲法法廷判決により失効)
「職務執行に影響を及ぼすに足りる」とは
113年憲判字第5号判決理由によれば、発言内容とその効果を含む文脈から、その場での侮辱が公務員の指揮・連絡・職務遂行を明らかに妨げるほどであることを意味します。単なる口頭の不満や一時的な感情による暴言だけでは、通常、直ちにこの要件を満たすとはいえません。
判決理由は、職務中の公務員や居合わせた上司・同僚がまず警告・制止できるとも説明しています。発言者がすぐに止めた場合は罪が必ず成立するとはいえません。制止後もその場で暴言を続けた場合は、公務妨害の主観的な目的を認め得ますが、さらに職務執行への影響も判断します。汚物をかける、唾を吐くなど公務員の体に触れる行為による侮辱や、多人数による集団的・継続的な暴言では、事前の制止は不要です。
機関・政策・職務そのものへの批判や侮辱に刑法第140条は適用されるか
第140条後段の「適法に執行する職務に対する公然の侮辱」を処罰する部分は、113年憲判字第5号判決により憲法第11条の表現の自由に反するとされ、判決宣告日である民国113年5月24日から効力を失いました。全国法規資料庫の第140条の条文にはこの文言が残っているため、判決主文と併せて読む必要があります。
ただし判決理由は、職務への侮辱であっても、特定の、または特定可能な公務員を攻撃・侮辱し、職務執行に影響を及ぼすに足りる場合、あるいはその公務員の社会的名誉や人格的名誉を損なう場合には、公務員侮辱罪または刑法第309条の公然侮辱罪が問題となり得ると述べています。
職務の現場以外や事後のオンライン発言
判決理由によれば、公務と無関係の理由で公務員の身分を持つ人を公然と侮辱した場合、適法な職務執行が終わった後に侮辱した場合、またはその場での侮辱ではない場合は、公務員侮辱罪の構成要件を満たしません。
公務員個人の名誉を傷つける言論について、判決理由は113年憲判字第3号判決の趣旨に従い、刑法第309条の公然侮辱罪を適用すべきと説明しています。処罰範囲と判断方法は「公然侮辱と名誉毀損:親告罪、6か月の期間、憲法法廷判決」を参照してください。
人を公然と侮辱した者は、拘役または9,000新台湾ドル以下の罰金に処する。暴行を用いて前項の罪を犯した者は、1年以下の有期懲役、拘役または1万5,000新台湾ドル以下の罰金に処する。(台湾刑法第309条の訳)
公務員への侮辱は誰が告訴するか。期限は?
どの条文に当たるかで異なります。第140条が属する刑法第5章の公務妨害罪(第135条~第141条)には親告罪とする規定がありません。第309条の公然侮辱罪は第314条により親告罪です。告訴できる人が犯人を知った時から6か月以内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法第237条第1項)。
113年憲判字第5号判決理由は、公然侮辱罪については公務員本人、その配偶者、その他刑事訴訟法第233条で告訴できる人が告訴できると述べています。また、職務中の侮辱について所属機関や上司にも独立した告訴権を与える刑事訴訟法改正を、関係機関が検討し得ると指摘しています。
押す・物を投げるなどの身体的行為
身体的行為が暴行・脅迫に達する場合、刑法第135条の公務妨害罪が問題となり得ます。113年憲判字第5号判決理由も、第135条第1項の暴行・脅迫に達したときは事件の事情に応じて公務妨害罪として扱うべきと述べています。
第135条第1項または第2項の罪を、動力付き交通手段を運転して犯した場合、または使用目的で凶器その他危険物を携帯して犯した場合は、6か月以上5年以下の有期懲役です(同条第3項)。暴行を用いて公然侮辱罪を犯した場合は第309条第2項によって処罰されます。
公務員が適法に職務を執行しているときに暴行・脅迫を加えた者は、3年以下の有期懲役、拘役または30万新台湾ドル以下の罰金に処する。(台湾刑法第135条第1項の訳)
公務員侮辱を疑われたときの黙秘権と弁護人
警察の出頭通知や検察署の呼出状を受けたら、取調べ時の権利を確認できます。被告人には、黙秘でき、意思に反する供述をする必要がないこと、弁護人を選任できることを取調べ前に告知しなければなりません(刑事訴訟法第95条第1項第2号・第3号)。司法警察官や司法警察による被疑者の取調べにも準用されます(第100条の2)。
罪の成否は、発言の文脈、公務妨害の主観的な目的、職務執行への影響を及ぼすに足りるかなどの具体的な事実によります。
