事業の適用範囲と担当者の役割
第71条は、事業の責任者、会計を統括する者と実務を担当する者、法令に従って会計事務を受託した者を対象にしています。登記上の代表者だけを調べればよいわけではありません。誰が判断し、誰が伝票を作り、誰が記帳したかを確認します。また、会計という肩書があるだけで、すべての不備をその人に帰すこともできません。
そもそも同法が適用される事業かという問題もあります。第82条は、一定の小規模な組合事業または個人事業について、同法を適用しないことができるとし、認定基準を中央の所管機関が定めるとしています。小さい会社なら必ず対象外という意味ではありません。組織形態と基準を確認する必要があり、他の法律上の責任まで当然になくなるものでもありません。
虚偽と知っていたか、どの行為に当たるか
第71条第1号は、虚偽だと知っている事項について会計伝票を作成し、または帳簿に記入する行為を規定します。契約、納品、支払い、照合資料は記載の真偽を調べる根拠です。連絡や承認の経緯は、担当者が当時何を知っていたかに関わります。後日差額が判明したことと、当初から架空取引だと認識していたことは同じではありません。
保存すべき会計資料を故意に失わせる行為、内容の偽造や変造、頁の損壊なども同条に列挙されています。故意に記録を省いた類型では、その結果として財務諸表が虚偽になったことも要件です。「粉飾」とひとまとめにせず、各号の行為と結果の条件を分けて確認します。
電子帳簿では操作記録と報告書をつなぐ
第72条は電子的に会計資料を処理する事業を対象にし、前条の人員に加え、電子処理に関係する担当者も規定しています。虚偽の情報を故意に登録または入力する行為が、その一つです。アカウントの名義人、実際の操作人、変更の承認者が違う場合もあり、共用アカウントでは特に名義だけで判断できません。
保存媒体の会計資料の故意の損壊、消去、改変や、故意の登録漏れなどについては、財務諸表が虚偽となる結果を求める各号の文言にも注意が必要です。版の履歴、権限設定、変更前後のデータ、出力された報告書を対応させると、変更が報告書にどう反映されたかを確かめられます。
事前に拒否や訂正意見を示した証拠
第73条は、会計の統括担当者、実務担当者、電子処理の関係者について、刑を軽減または免除できる場合を設けています。前2条の罪を犯し、事前に拒否または訂正意見を示したことに確実な証拠があるのが条件です。裁量的な規定であり、反対メールが一通あれば必ず免刑になるという制度ではありません。
拒否と訂正意見はどちらかでよい一方、いずれも事前のものかが問われます。送信時刻、相手、対象の取引、訂正を求めた内容を残すと、何に反対したのかがわかります。発覚後に後悔を述べることでは、事前の異議を代用できません。過去の日付に書き換えた資料を作る行為も、証拠の信頼性を損ないます。
異議の記録と会計資料の原形
原取引の資料、上司の指示、承認、実際の入力を取引ごとに結び付け、自ら処理した範囲と転送しただけの範囲、問題を認識した時点を分けて記録します。個人のメモも説明の資料にはなりますが、作成日時や内容について別の記録との照合が必要になることがあります。
後の訂正は問題への対応を示しますが、それだけで過去の行為が消えるわけではありません。訂正前後の版と理由を残すことと、異常なデータを削除してしまうことには違いがあります。資料を保全する際もアクセス権限を守り、証拠集めを理由に無関係な帳簿を持ち出したり、原記録を消したりしないようにします。
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