対象となる職務と情報の得方
対象には医師、薬剤師、心理師、助産師、宗教者、弁護士、弁護人、公証人、会計士と業務上の補助者が含まれ、以前これらの職務に就いていた人も含まれます。まず証人が条文に挙がる立場かを確かめ、次に問題の情報をその職務のために知ったのかを分けて考えます。医師が街で偶然見た出来事は、医師という肩書だけで診療上の秘密にはなりません。
退職や委任の終了後も、かつて職務を通じて得た他人の秘密が当然に保護から外れるわけではありません。一方、診療所や法律事務所で交わされた話であっても、場所だけであらゆる発言を業務上の秘密と決めることはできません。質問ごとに、誰の情報か、公開されていない事項か、どの仕事との関係で知ったかを確認する必要があります。
秘密の本人による許可の範囲
拒否の対象は、業務により知った他人の秘密です。患者や依頼者に関する非公開事項でも、どの質問がその内容を明らかにするかを特定します。公開の場で直接見聞きした行為や、受任した仕事とは無関係の経験については、通常の証人として回答を求められる場合があります。同じ証人への質問でも、答えられる部分と拒める部分は分かれます。
182条は秘密の本人が許した場合を例外としています。捜査機関が情報を必要とすることや、別の関係者が公開を望むことは、本人の許可と同じではありません。許可があっても、その対象が特定の診断や取引資料に限られるなら、職務記録の全体について許したと読み広げるべきではありません。誰が何を許したかを確認してから回答範囲を判断します。
拒否理由を示した後、誰が判断するか
証人が証言を拒む場合、183条はその理由を疎明するよう求めています。職務、情報を得た業務上の関係、質問が他人の秘密に触れる理由、本人の許可の有無を説明することが考えられます。秘密そのものを先に詳しく暴露して疎明する必要があるという意味ではありません。質問を区切れば、秘密と無関係な部分の尋問まで止めずに済みます。
捜査中は検察官が拒否の許否を命令し、裁判中は裁判長または受命裁判官が裁定します。証人が敏感な話題だと思うだけで拒否が認められたことにはなりません。逆に拒否を退けるときも、問題の情報がなぜ条文の範囲外なのかが焦点です。呼出状、質問と回答、許否の処理を残しておくと、争われている事項を後から特定しやすくなります。
質問を分けて判断する場面
たとえば証人が被告人を以前から知っており、別の当事者の診療も担当していたとします。公開の場所で両者が会ったことを見たという話と、診療中に知った病歴は、情報源が異なります。質問する側は前者に範囲を絞ることができ、証人は後者について拒否の理由を示せます。すべて回答するかすべて拒むかという二択にしないことで、尋問は許される範囲で続けられます。
診療記録や依頼内容には、一つの質問の中に公開情報と非公開情報が混在することもあります。その場合は質問のどの部分が秘密に触れるかを示し、必要なら問いを区切ります。「事件に役立つ」ことと「秘密でない」ことは同じではありません。秘密の本人が許したという主張があるなら、誰のどの情報について許したのかを確かめます。
証人は拒否を主張した時点、質問文と機関の判断を記録に残すことで、後に別の質問と混同されるのを防げます。職務上の秘密があるかどうかは情報の具体的な得方に依存しますから、同じ医師や弁護士に対する尋問でも質問ごとに結論が変わり得ます。個別に扱うことは、守るべき秘密と必要な証言の双方を見失わないための手続上の整理です。
証言以外の問題と混同しない
182条は特定事項についての証言拒否を定める規定です。専門職を証人の立場から一律に外すものではなく、文書の捜索や押収の適否をこの条文だけで決めるものでもありません。記録の提出を求められた場合は、その措置を認める別の規定と制限を確認する必要があります。
証人として尋問を受けるときは、各質問と情報を得た経緯を分けて記録し、秘密に触れるなら回答前に理由を示すことが実務上の出発点になります。回答してから秘密だと気づいた場合とは手続上の状況が異なります。最終的な許否は法定の機関が判断するため、単に「専門職だから」と述べるより、条文の要件に沿った事実を示す方が争点を明確にできます。