借主の事情と、それを利用した貸付け
支払いを急ぐ事情や借入れの経験、相談先の有無は、貸付時の状況を調べる手がかりです。しかし、医療費が必要だったなど一つの事情だけで、直ちに重利罪が成立するわけではありません。貸主がその事情を知り、利用したかも、契約前後のやり取りから確認します。後に返済できなくなった事実だけでは、貸付時の要件をすべて証明できません。
切迫、軽率、経験不足、援助を求めにくい状況は、いずれかを検討する関係にあります。すべてが同時に必要なわけではありません。また、借主の署名がある契約書も、それだけで不当な取利を適法にするものではありません。勧誘や条件交渉、実際の金銭授受と合わせて読まれる資料です。
借用書の元本と、実際に受け取った額
借用書に記された額、借主に実際に渡った額、あらかじめ差し引かれた費用を分けて把握します。手数料を先に引いて残額を渡す契約では、書面上の元本だけを見ても資金負担の全体はわかりません。どの額をどう評価するかは、控除の理由や貸借の内容を含めて判断する必要があります。
分割返済、延長に伴う費用、遅延違約金、別途手渡した現金にも、それぞれ日付と根拠を残します。支払人、受取人、名目を対応させると、元本の返還とそれ以外の利益を区別できます。月利と年利など、期間の違う数字は期間を示して比較しないと、負担を正確に捉えられません。
「サービス料」という名前でも実質を確認する
同条第2項は借入れに関連する費用を重利に含めています。別口座に振り込ませたり、別のサービス契約に記載したりしても、借入れとの関係を調べる必要があります。指定された第三者への支払いについても同様です。一方、無関係な独立の取引まで、一律に貸主の重利として計上することはできません。
元本と著しく釣り合わない利益かどうかは、個別の貸借と得た利益から判断します。第344条には、ある一定の年利を超えれば必ず犯罪になるという一律の基準はありません。民事上どこまで利息を請求できるかと、刑事上の重利罪の成立は別の問題です。利息条項の民事上の効力だけで刑事責任は決まりません。
威迫して重利を取る行為には未遂処罰もある
第344条の1は、暴力、脅迫、威嚇、住居への侵入、傷害、器物の損壊、監視など、人に恐怖を抱かせる方法による重利の取得を規定します。対象は前条第1項の重利です。単なる督促と同じではなく、貸金があることも、どのような取立方法でも許される理由にはなりません。
この条文には未遂処罰の規定があります。借主が実際には払わなかったとしても、それだけで刑事問題がなくなるわけではありません。実行に着手したか、重利を取得する行為の要件を満たすかを調べます。第344条一般の重利罪と第344条の1では、未遂処罰の有無を区別する必要があります。
総額だけでは見えない支払いの経緯
貸付け前後の会話には、貸主が借主の事情をどこまで知り、どの費用を求めたかが表れることがあります。送金記録は資金移動を示しますが、一枚の画面だけで借主の窮状や費用の性質まで証明できるとは限りません。元の会話データと日時、口座情報を対応させて保存すると、説明の根拠を確認できます。
訪問、追尾、威嚇するメッセージがあった場合は、日時、具体的な言動、請求との関係を分けて記録します。支払済みの額、残債、威迫の停止を求める事情は、それぞれ別の事実です。資料を整理する段階では、個々の支払いに先に罪名を付けるより、後から照合できる形で経緯を残すことが役立ちます。