第一審の弁論が終わる前という境界
第269条により、検察官は第一審の弁論終結前に、不起訴にすべき事情や不起訴が適当な事情を発見した場合、起訴を取り消すことができます。単に第一審判決がまだ出ていないというだけでは足りません。
取消しには、理由を記載した取消書の提出が必要です。法廷で検察官が再検討を述べたことと、正式に取り消したことは区別されます。被告人や被害者が事件の終了を希望したというだけでも、検察官の取消しが成立したことにはなりません。
示談と起訴の取消しは別の行為
示談は判断に関係することがありますが、第269条は示談さえ成立すれば起訴を取り消すと定めていません。賠償の受領だけでなく、不起訴にすべき、または不起訴が適当という法律上の事情があるかが問題です。被害回復と手続を終わらせる行為はそれぞれ検討されます。
被害者による告訴の取下げ、検察官による起訴の取消し、当事者による上訴の取下げは、行う人も効果も異なります。示談書の「告訴を取り下げる」という文言は検察官の取消書の代わりにはなりません。告訴を要しない犯罪の訴追が、その文言だけで当然に終わるわけでもありません。
告訴人の再議は書面受領後の十日
第270条は第255条から第260条を準用します。第256条により、告訴人は通常、処分書を受け取った後10日以内に不服の理由を書面で示し、元の検察官を経由して、直接上級の検察署の検察長または検察総長に「再議」を申し立てられます。伝聞で取消しを知った日と、処分書を受領した日は同一とは限りません。
ただし、第253条または第253条の1の処分に告訴人が同意していた場合には、再議を申し立てられないという制限があります。再議が可能な処分書の正本には、期間と申立先の直接上級機関を記載しなければなりません。これは検察組織内の救済であり、無罪判決に対して裁判所へ上訴する手続ではありません。
確定した後の再起訴には法定の例外が必要
第260条により、不起訴処分の確定後は、同一事件を原則として再び起訴できません。新たな事実・証拠の発見や、同条が列挙する再審原因に当たる事情が例外となります。既にあった証拠について評価の言葉を強めただけでは、そのような事情が生じたとはいえません。
新たな事実・証拠には、捜査中に既に存在・成立していたものの調査や考慮が間に合わなかった資料と、その後に存在・成立した資料の双方が含まれます。取消し後に生じた資料に限られませんが、何が新たな内容なのかは具体的に検討されます。取消書の理由と当時の資料を対応させておくと、後から出た資料との違いを確認できます。