本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
返済しないというだけでは、詐欺にはなりません。刑法第339条の詐欺罪が成立するには、財物を不法に手に入れようとする意思と、人をだます行為が必要です。借りた後に返せなくなったのは、通常は民事上の債務不履行の問題で、それだけでは借りた時点で貸主をだましたという証拠になりません。お金を取り戻すには、裁判所の支払命令や民事訴訟を検討します。告訴するときは、事実をありのままに伝えることが大切です。貸し借りのトラブルを法律上どう評価するかを誤っただけで、すぐに誣告罪になるわけではありません。誣告罪が問題となり得るのは、犯罪事実がないと知りながら詐欺の話をでっち上げ、相手を刑事処分にかける目的で告訴した場合です。
お金を返さないと、詐欺罪になりますか?
意圖為自己或第三人不法之所有,以詐術使人將本人或第三人之物交付者,處五年以下有期徒刑、拘役或科或併科五十萬元以下罰金(刑法第339條第1項)。
〔非公式要約〕刑法第339条第1項は、自分または第三者のものにする不法な意思で人をだまし、財物を交付させた者を処罰します。法定刑は5年以下の有期徒刑(台湾の有期の自由刑)、拘役または50万台湾ドル以下の罰金です。有期徒刑または拘役に罰金が併科される場合もあります。
同じ方法で財産上の利益を不法に得る行為と、未遂も処罰されます(第2項・第3項)。成立に必要なのは、自分や第三者のものにしようとする不法な意思と、人をだます行為があり、それによって相手が思い違いをして財物を渡したことです。
これらの要件は、お金を借りた時点でそろっている必要があります。返済能力が足りなかったというだけで、不法に自分や第三者のものにしようとする意思があったとはいえません。使途、担保、返済原資などを故意に偽り、そのため相手が誤信してお金を渡したかを確認します。借りた時点でだます行為や不法に取得する意思がなく、その後の事情で返済できなくなっただけなら、債務不履行だけで詐欺罪が成立するわけではありません。
単にお金を返せないだけなら、どんな法律関係になりますか?
金銭の消費貸借は、同じ種類・品質・数量のものを返す約束で、お金の所有権を相手に移す契約です(民法第474条第1項)。借主は約束した期限までに返済します。返済期限を決めていない場合、借主はいつでも返済でき、貸主は1か月以上の相当な期間を定めて返済を求めることができます(第478条)。
返済期限が決まっている債務は、その期限を過ぎると遅滞になります。期限を決めていない場合は、請求を受けても払わなければ、請求を受けた時から遅滞になります(民法第229条第1項・第2項)。お金の債務が遅れた場合、法定利率による遅延利息を請求でき、ほかの損害を証明できればその賠償も請求できます(第233条)。いずれも民事上の請求で、一時的に払えないというだけで刑事事件になるわけではありません。
詐欺だと主張するには、どんな証拠をそろえればよいですか?
詐欺罪で問われるのは借りた時点の意思とだます行為なので、そのころの証拠が大切です。たとえば、借りたときの会話やメッセージ(ありもしない使い道・担保・返済のあてを並べていないか)、振込や現金の受け渡しの記録、その後も別のうその説明で返済を引き延ばしていないか、お金が実際に説明どおりに使われたかなどです。「既読無視」や返済期限を過ぎたことだけでは、借りた時点で不法に手に入れようとする意思があったとは証明できません。
お金を取り戻したいだけなら、刑事告訴より手早い民事の手続きはありますか?
お金の支払いを求める債権者は、民事訴訟法の督促手続きにより、裁判所に支払命令を申し立てることができます(第508条第1項)。申立書には、当事者、請求の内容と金額、その原因となる事実を書き、支払命令を出してほしい旨を述べます(第511条)。裁判所は、債務者の言い分を聞かずに支払命令を出すことができます(第512条)。
債務者は、送達を受けてから延長できない20日の期間内に異議を出すことができます(第514条)。異議が出なければ、債権者は支払命令と確定証明書をもとに強制執行を申し立てられます。異議が出た部分については支払命令の効力がなくなり、訴えを起こしたか調停を申し立てたものとみなされます(第519条第1項)。相手が争わず支払いを先延ばしにしているだけの場合には便利ですが、借金そのものが争われる場合は、通常の民事訴訟が必要になることがあります。
相手が財産を隠しそうなときは、どうすればよいですか?
お金の債権について、将来の強制執行ができなくなるか、著しく難しくなるおそれがある場合、債権者は裁判所に仮差押えを申し立てて財産を保全できます(民事訴訟法第522条第1項、第523条第1項)。申立ての要件とリスクは、だまし取られたお金は取り戻せる?の仮差押えの説明をご覧ください。
詐欺の話をでっち上げて告訴すると、どんなリスクがありますか?
刑法第169条第1項は、相手を刑事処分や懲戒処分にかける目的で、担当の公務員に虚偽と知りながら申告する行為を、7年以下の有期徒刑で処罰します。告訴するときは、借りたときの会話、資料、お金を渡した経緯をありのままに伝えてください。結果として詐欺罪が成立しなかった場合や、法律上の評価を誤っていた場合でも、それだけで誣告罪になるわけではありません。問題になるのは、犯罪事実がないと知りながら相手がだましたという話をでっち上げ、相手を刑事処分にかける目的で告訴した場合です。
借入れ時の説明と回収手段の整理
相手の説明や行動が詐欺に当たるのか分からないとき、支払命令と民事訴訟のどちらにするか迷っているとき、仮差押えを考えているときは、どう主張するかを決める前に、事実と証拠を整理しておきましょう。このページは一般的な情報の提供であり、個別の事件への法的意見ではありません。
