本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
必ずしもなりません。会社による職場いじめの調査は、労働法上・行政上の手続きです。具体的な行為に犯罪の疑いがあれば、刑事捜査が始まることがあります。犯罪が成立するかどうかは、各罪の要件と証拠に基づいて判断されます。公然侮辱、名誉毀損、通常の傷害は原則として親告罪で、犯人を知ってから6か月以内に告訴しなければなりません。ただし、公務員が職務の執行中に台湾刑法第277条第1項の通常の傷害罪を犯した場合は、親告罪ではありません。
社内の調査と刑事手続きは、別々に進みます
職業安全衛生法第22条の1第1項によると、職場いじめとは、労働者が職場で仕事をしているときに、同じ事業単位の人(事業單位人員)が職務上の地位や権限などの関係を利用し、業務上必要かつ合理的な範囲を超えて、相手を傷つける言動、脅し、冷遇、孤立、侮辱などの不当な言動を続け、その労働者の心身の健康を害することをいいます。ただし、情状が重大な場合は、続いていなくても該当します。この定義は、雇用主が負う防止・対応の義務を決めるためのもので、刑法上の犯罪の要件ではありません。
申立ての受付、調査、決定は、雇用関係の中で行われる手続きです。雇用主が義務に違反した場合は、主に行政上の過料の問題になります。刑事事件は、被害者が警察や検察に告訴するか、検察官が職権で捜査することで進みます。職場いじめのすべてが犯罪になるわけではなく、具体的な行為が刑法などの要件を満たすときに初めて刑事責任が問題になります。二つの手続きは同時に進むことがあり、結論が同じになるとは限りません。
公然侮辱:きつい言葉なら何でも罪になるわけではない
刑法第309条は、公然と人を侮辱する行為を処罰します。憲法法廷は判決で、この規定を合憲としつつ、適用範囲を絞りました(出典は下記)。発言の文脈に照らして、他人の名誉を故意に公然とおとしめ、一般の人が合理的に我慢できる範囲を超えているかを判断し、名誉と表現の自由を比べて考える必要があります。この判決は公然侮辱罪の規定を違憲としたのではなく、「この範囲でなら憲法に反しない」として解釈の幅を絞ったものです。判決のうち、個別の事件の裁判を審査した部分から、ほかの事件の結果を推し量ることはできません。職場でのきつい言葉が罪に当たるかどうかは、事件ごとに判断されます。
職場での厳しい批判や感情的な言葉が、そのまま公然侮辱罪になるとは限りません。告訴するかどうかは、発言内容、場面、相手、証拠を確認してから判断します。
名誉毀損:人の評判を傷つける事実を広める
刑法第310条は、広く知らせる目的で、他人の名誉を傷つけるような事実を指摘したり、人に伝えたりする行為を処罰します。その事実が真実だと証明できれば原則として処罰されませんが、公共の利益と関係のない私生活上の事柄(私徳)は例外です。職場霸凌防治措施準則第2条も、意図的にうわさを広めたりプライバシーを暴露したりすることを、職場いじめかどうかを判断するときに考慮する事情に挙げています。また、憲法法廷の112年憲判字第8号判決(2023年)によると、指摘した事柄が公共の利益に関わる場合は、真実だと証明できなくても、発表の前に合理的な裏付け調査をしていて、手に入れた資料から客観的に真実だと信じるだけの理由があれば、処罰されません。私徳にしか関わらない事柄は、この扱いの対象外です。この判決は司法院釈字第509号解釈を補うもので、裏付け調査が十分だったかどうかは、事件ごとの事情から判断されます。
脅迫罪・強制罪・傷害罪
他人の生命、身体、自由、名誉、財産に害を加えると告げて、その安全を脅かす行為は、刑法第305条の「恐嚇危害安全罪」(日本の脅迫罪に近い罪)に当たり得ます。暴行や脅迫で義務のないことをさせたり、権利の行使を妨げたりする行為は、第304条の強制罪(日本の強要罪に近い罪)に当たり得ます。けがをさせた場合は、第277条第1項の傷害罪が問題になります。いずれも、それぞれの要件を証明する必要があります。
親告罪と6か月の告訴期間
| 条文 | 被害者の告訴が必要か |
|---|---|
| 刑法第309条・第310条:公然侮辱、名誉毀損 | 必要(第314条) |
| 刑法第277条第1項:通常の傷害 | 原則として必要(第287条。ただし公務員が職務の執行中に犯した場合を除く) |
| 刑法第305条:恐嚇危害安全(脅迫) | 不要 |
| 刑法第304条:強制罪 | 不要 |
親告罪の場合、刑事訴訟法第237条により、告訴できる人が犯人を知ってから原則として6か月以内に告訴しなければなりません。これに対して、雇用主への職場いじめの申立ては、原則として行為が終わってから3年以内です。相手が地位や権限を利用した場合は、退職の日から1年という期間の方が長ければ、そちらが適用されます(準則第8条。申し立てられたのが事業単位の最高責任者で、地方の主管機関に申し立てる場合は、職業安全衛生法第22条の3第2項によります)。起算点も長さも大きく違うので、告訴を考えているなら早めに確認してください。
職場でのセクハラには、性別平等工作法と「工作場所性騷擾防治措施準則」(職場のセクハラ防止措置に関する準則)が適用されます。性別平等工作法第38条の4により、性騷擾防治法第25条の罪(すきを突いて体に触れる行為などの罪)も適用されます。性やジェンダーに関わるつきまといには、跟蹤騷擾防制法(つきまとい行為を規制する法律)の規定があります。職場いじめの申立てにセクハラが含まれる場合、雇用主はそれぞれの手続きに沿って対応しなければなりません(準則第27条)。
申立てを受けた方へ:調査での説明
会社は調査の面談内容を記録します(準則第16条)。そこで話した内容が後で別の手続きに出され、話の一貫性を確認されることもあります。面談の前に事実を整理し、覚えていることと推測を分け、記録は一字一句確認してください。
警察や地方検察署から通知を受けた被疑者は、弁護人を選任できます。弁護人は取調べに立ち会い、意見を述べることができます(刑事訴訟法第245条第2項)。ただし、証拠隠滅や共犯者・証人との口裏合わせのおそれがある場合など、法律で定められた場合には制限されることがあります。
社内手続きと刑事上の期限の確認
刑事責任を問われるかどうかは、「いじめ」という呼び名ではなく、具体的な行為と証拠で決まります。新しい制度は2026年7月1日に施行されたばかりで、実務上の解釈はこれから固まっていきます。このページは一般的な情報の提供であり、個別の事件への法的意見ではありません。
