本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
上訴できるのは判決の送達を受けてから20日までです(台湾刑事訴訟法第349条)。上訴状は、判決をした原審の裁判所に出します(第350条)。第一審判決に対して第二審へ上訴するときは具体的な理由を書く必要があり、書いていなければ上訴期間の満了後20日以内に理由書を追加で出します(第361条)。被告人が上訴した場合や被告人の利益のために上訴された場合、第二審は原則として原判決より重い刑を言い渡せません(第370条)。自分の過失によらず期限を逃したときは、その原因がなくなってから10日以内に期間回復を請求できます(第67条)。結果は事件ごとの事実と証拠によって変わります。
上訴の期限は何日? いつから数える?
上訴期間は判決の送達を受けてから20日です。判決の宣告後、送達を待たずにした上訴も有効です(第349条)。上訴期間の基準は宣告日ではなく送達日で、通常は送達の翌日から数えます(刑事訴訟法第65条、民法第120条)。判決書を受け取ったら、その日付を必ず控えておいてください。
住所や事務所が裁判所の所在地にない場合は、法定期間を数えるときに在途期間(移動にかかる日数として定められた期間)を差し引きます。在途期間の日数は、司法行政の最高機関が定めています(第66条)。ご自身の期限がいつまでかは、判決書の記載と裁判所の案内で確認してください。
上訴期間為二十日,自送達判決後起算。但判決宣示後送達前之上訴,亦有效力。(刑事訴訟法第349條)
〔非公式要約〕上訴期間は20日で、判決の送達後から起算します。判決の宣告後、送達前にした上訴も有効です(刑事訴訟法第349条の趣旨)。
上訴できるのは誰? 被害者や告訴人は?
判決に不服がある当事者は、上級の裁判所に上訴できます(第344条第1項)。被告人の法定代理人や配偶者も被告人の利益のために独自に上訴でき、検察官も被告人の利益のために上訴できます(第345条、第344条第4項)。被害者や告訴人は当事者ではないので、自分で上訴することはできませんが、理由を示して検察官に上訴を求めることはできます。上訴するかどうかを決めるのは検察官です(第344条第3項)。
上訴状はどこに出す? 刑務所や拘置所にいる場合は?
上訴状は、その判決をした原審裁判所に出します。相手方当事者の人数分の写しも添えます(第350条)。刑務所や拘置所にいる被告人は、期間内に施設の長へ上訴状を出せば、期間内に上訴したものとして扱われます。自分で上訴状を書けないときは、施設の職員が代わりに作成します(第351条第1・2項)。
第二審への上訴には理由が必要?
必要です。地方裁判所の第一審判決に対して上訴する(日本でいう控訴にあたります)ときは、上訴状に具体的な理由を書かなければなりません。書いていなければ、上訴期間が満了してから20日以内に、理由書を原審裁判所へ追加で出します。それにも間に合わなかったときは、原審裁判所がまず期間を定めて補正を命じます(第361条第2・3項)。
理由が書かれていない上訴は、第二審の裁判所が判決で棄却します。ただし、補正できるのに原審裁判所が補正を命じていなかった場合は、第二審の裁判長がまず期間を定めて補正を命じます(第367条)。
上訴書狀應敘述具體理由。上訴書狀未敘述上訴理由者,應於上訴期間屆滿後二十日內補提理由書於原審法院。逾期未補提者,原審法院應定期間先命補正。(刑事訴訟法第361條第2項、第3項)
〔非公式要約〕第二審への上訴書には具体的な理由が必要です。記載がなければ、上訴期間満了後20日以内に原審裁判所へ理由書を提出します(刑事訴訟法第361条第2・3項の趣旨)。
被告人が上訴すると、かえって刑が重くなる?
被告人が上訴した場合や被告人の利益のために上訴された場合、第二審は原判決より重い刑を言い渡せないのが原則です(日本でいう不利益変更の禁止)。ただし、原判決が適用した条文を誤っていたために判決を取り消すときは、この制限はかかりません(第370条第1項)。ここでいう「刑」には、罪ごとに言い渡される宣告刑と、複数の罪についてまとめて定められる執行刑の両方が含まれます(同条第2項)。
この制限は、被告人が上訴したか、被告人の利益のために上訴されたことが前提です。ほかにも上訴がされているか、条文の適用を誤った場合という例外に当たるかは、事件ごとに確かめる必要があります。上訴の範囲については、次の判断も出ています。憲法法廷の115年憲判字第4号判決は、2021年6月16日の改正前の第348条第2項(判決の一部に上訴すると、それと関係する部分も上訴されたものとみなす規定)は、原判決が無罪とした部分には適用されず、その限りで憲法に反しないとしました。つまり、有罪の部分だけに上訴しても、関係する無罪の部分まで上訴されたことにはなりません。この判決が審査したのは改正前の規定で、2021年の改正では「関係する部分が無罪、免訴、不受理のときは除く」というただし書が加えられています。また、最高法院刑事大法廷の台上大字第5375号裁定(2022年3月30日)は、第348条の改正が施行された2021年6月18日より前に第一審や第二審に係属していた事件でも、施行後に上訴されて第二審や第三審に係属したものは、改正後の規定で上訴の範囲を決めるとしました。現行第348条では、一部への上訴と関係する部分も原則として上訴されたものとみなしますが、無罪・免訴・不受理の部分は除かれます。また、刑、没収、保安処分だけに範囲を限って上訴することも明示できます。実際の上訴範囲は、判決主文と上訴状の記載に即して確認します。
由被告上訴或為被告之利益而上訴者,第二審法院不得諭知較重於原審判決之刑。但因原審判決適用法條不當而撤銷之者,不在此限。(刑事訴訟法第370條第1項)
〔非公式要約〕被告人または被告人の利益のために上訴した場合、第二審は原審より重い刑を言い渡せません。ただし原審の法条適用の誤りを理由に判決を取り消した場合は例外です(刑事訴訟法第370条第1項の趣旨)。
簡易判決に不服があるときは、どこに上訴する?
簡易判決に不服があるときは、管轄する地方裁判所の合議体に第二審として上訴します。ただし、刑事訴訟法第451条の1の請求どおりに刑を言い渡した判決には上訴できません(第455条の1第1・2項)。簡易判決の上訴には上訴の通則と第二審の規定が準用されますが、第361条は除かれます(同条第3項)。
第二審の判決の後、さらに第三審へ上訴できる?
第三審への上訴(日本の上告にあたります)ができるのは、判決に法令違反がある場合に限られます(第377条)。また、第376条第1項に挙げられた事件、たとえば法定刑の上限が3年以下の有期徒刑(台湾の有期の自由刑)、拘役(短期の自由刑)または罰金のみの罪は、第二審の判決を受けた後に第三審へ上訴することが原則としてできません。ただし、同項のただし書に例外が定められています。
第三審の上訴状にも理由を書く必要があります。書いていなければ、上訴してから20日以内に理由書を原審裁判所へ出せますが、出さなかったとしても、裁判所が補正を命じる必要はありません(第382条第1項)。第二審のように補正の機会が与えられるとは考えないでください。なお、最高法院刑事大法廷の109年度台上大字第3426号裁定(2021年1月27日)は、一罪として起訴された事件で、第一審と第二審がともにその一部について判決理由の中でだけ無罪と判断し、主文で無罪を言い渡さなかった場合(不另為無罪之諭知)に、被告人が有罪の部分だけを第三審へ上訴したときは、理由中で無罪と判断された部分はすでに確定しており、第三審の審理の対象にならないとしました。この裁定は2021年6月16日の第348条改正前のものです。現在の事件で上訴範囲を定める際は、同条の現行規定と、上訴の対象として示された部分を確認します。個別の事件は具体的な事実によって判断されます。
期限を過ぎてしまったら? 上訴を取り下げたいときは?
自分の過失によらずに上訴期間を過ぎてしまった場合は、その原因がなくなってから10日以内に、原審裁判所へ書面で期間回復を請求できます(台湾の条文では「回復原状」。日本の上訴権回復の請求に近い制度です)。書面では、遅れた理由と、その原因がなくなった時期を疎明し、同時に上訴もします。代理人を立てられる事件では、代理人の過失は本人の過失とみなされます(第67・68条)。
上訴は判決が出るまでなら取り下げられます。ただし、上訴権を放棄したり上訴を取り下げたりすると、その上訴権は失われます(第354・359条)。取り下げる前に、事件にどう影響するかを確かめてください。
非因過失,遲誤上訴、抗告或聲請再審之期間,或聲請撤銷或變更審判長、受命法官、受託法官裁定或檢察官命令之期間者,於其原因消滅後十日內,得聲請回復原狀。(刑事訴訟法第67條第1項)
〔非公式要約〕過失なく上訴期間を逃した場合、原因がなくなった後10日以内に期間回復を請求できます(刑事訴訟法第67条第1項の趣旨)。
判決書と送達日を確認する
判決書を受け取ったら、送達日を記録し、上訴期限を確認してください。第二審への上訴には具体的な理由が必要で、第三審は法令違反がある場合に限られます。送達から期限までの間に、判決の理由を読み込んで争う点を整理することになりますので、この間にご相談ください。判決書、送達日が分かる資料、争点に関係する証拠をそろえると、上訴の範囲と理由を整理できます。このページは一般的な説明で、個別の事件についての法的意見ではありません。
