台湾刑法では、犯罪行為者に属する犯罪収益は没収し、全部または一部を没収できないか没収が適当でないときは価額を追徴します(第38条の1)。第三者が他人の違法行為を知りながら犯罪収益を取得した場合なども対象です。財産を没収される可能性がある第三者は、事件の最後の事実審で口頭弁論が終結する前に参加を申し立てられます(台湾刑事訴訟法第455条の12)。没収が過酷となるおそれなどがあれば、裁判所は宣告しないか減額できます(台湾刑法第38条の2)。対象と範囲は個々の事実と証拠で判断されます。
刑事事件では何が没収対象になるか
対象は、禁制品、犯罪に使用・準備された物または犯罪によって生じた物、そして犯罪収益の三つに分かれます。禁制品は犯罪行為者の所有かどうかを問わず没収します。犯罪に使用・準備された物や犯罪によって生じた物が犯罪行為者に属するときは没収できますが、特別な規定があればそれに従います(台湾刑法第38条第1・2項)。
犯罪行為者に属する犯罪収益は、条文上「没収する」と定められています(第38条の1第1項)。違法行為から得た物、その転換物・財産上の利益、そこから生じた果実を含みます(同条第4項)。執行猶予を受けても、その効力は没収の宣告に及びません(第74条第5項)。
犯罪収益を使ったり譲ったりした後も追徴されるか
価額の追徴に変わることがあります。犯罪収益の全部または一部を没収できないか、没収の執行が適当でないときは、その価額を追徴します(台湾刑法第38条の1第3項)。犯罪収益や追徴の範囲・価額を定めることが著しく困難な場合は、推計して認定できます(第38条の2第1項)。
犯罪収益が被害者に適法に実際に返還されている場合は、没収も追徴も宣告しません(第38条の1第5項)。また、憲法法廷の民国111年憲判字第18号判決理由によると、罰金を完納できない場合には労役や社会労働への換刑が可能ですが、没収・追徴を執行できない場合、国は労役や社会労働で代替執行できません。
没収・追徴が過酷な場合、裁判所は宣告しないか減額できるか
没収や追徴が過酷となるおそれ、刑法上の重要性を欠く、犯罪収益の価値が低い、または宣告を受ける人の生活を維持する必要がある場合、裁判所は宣告しないか減額できます(台湾刑法第38条の2第2項)。
条文は「できる」と定め、適用するかは裁判所が個々の事情で判断します。手続上は、証拠調査に必要な時間・費用が没収の申立てと著しく釣り合わない場合、検察官または私人訴追の代理人の同意を得て、裁判所が没収を免除できる規定もあります(台湾刑事訴訟法第455条の15第1項)。
前2条の没収または追徴を宣告すると過酷となるおそれ、刑法上の重要性を欠く、犯罪収益の価値が低い、または宣告を受ける人の生活条件を維持する必要がある場合、宣告しないか減額できる。(台湾刑法第38条の2第2項の訳)
家族や会社名義の財産も没収されるか
一定の場合は没収されます。犯罪行為者以外の自然人、法人、法人格のない団体が、他人の違法行為を知りながら取得した場合、他人の違法行為により無償または著しく不相当な対価で取得した場合、あるいは犯罪行為者が他人のために違法行為を行い、その人が取得した場合のいずれかに当たる犯罪収益は、同様に没収します(台湾刑法第38条の1第2項)。
犯罪に使用・準備された物や犯罪によって生じた物が第三者に属し、その第三者が正当な理由なく提供または取得した場合も、没収できます(第38条第3項)。没収裁判が確定すると権利は国に移りますが、第三者が没収対象について持つ権利や犯罪により行使できる債権は影響を受けません(第38条の3第1・2項)。
犯罪行為者以外の自然人、法人または法人格のない団体が、次のいずれかによって犯罪収益を取得した場合も同じである。一、他人の違法行為を知りながら取得した場合。二、他人の違法行為により無償または著しく不相当な対価で取得した場合。三、犯罪行為者が他人のために違法行為を行い、その人が取得した場合。(台湾刑法第38条の1第2項の訳)
財産を没収され得る第三者はどう手続に参加するか
第三者は、事件の最後の事実審で口頭弁論が終結する前に、書面で参加を申し立てられます。申し立てがなくても、裁判所が必要と認めれば、職権で参加を命じる決定をしなければなりません(台湾刑事訴訟法第455条の12第1~3項。下記の条文訳も参照)。
第三者の財産を没収すべき相当な理由があると検察官が認めた場合、起訴前にその第三者へ通知して意見を述べる機会を与えなければなりません(第455条の13第1項)。参加者には、その財産の没収について被告人の訴訟上の権利に関する規定を準用し、代理人に出廷を委任することもできます(第455条の19、第455条の21第1項)。適法な呼出し・通知を受けても出廷しない場合、裁判所は陳述を待たずに判決できます(第455条の24第2項)。
財産の没収判決が確定した第三者が、過失なく手続に参加できなかった場合、その確定判決を知った日から30日以内に判決を言い渡した裁判所へ取消しを申し立てられます。ただし判決確定から5年を過ぎると申し立てられません(第455条の29第1項)。
財産を没収される可能性がある第三者は、事件の最後の事実審で口頭弁論が終結する前に、管轄裁判所へ没収手続への参加を申し立てられる。……第三者が申し立てず、裁判所が必要と認める場合、裁判所は職権でその参加を命じなければならない。ただし、第三者が裁判所または検察官に財産の没収に異議を述べないと表明した場合を除く。(台湾刑事訴訟法第455条の12第1・3項の訳)
薬物・マネーロンダリング・詐欺事件の拡大没収
特定の罪で、行為者が支配する別の財産や財産上の利益がほかの違法行為による収益だと示す事実があれば、今回の事件の犯罪収益でなくても没収する制度です(台湾薬物危害防制条例第19条第3項)。台湾マネーロンダリング防止法第25条第2項と詐欺犯罪危害防制条例第48条第2項にも、同様の文言があります。
憲法法廷の民国113年憲判字第1号判決は、民国109年1月15日改正公布の薬物危害防制条例第19条第3項を審査し、法律の明確性、比例原則、公正な裁判の原則に違反しないとして申立てを退けました。また「証明するに足りる事実」は検察官が立証責任を負うこと、裁判所の認定に必要な証明の程度と限界を示しました(下記の裁判例)。同判決はマネーロンダリング防止法や詐欺犯罪危害防制条例の規定を審査していません。
行為時の法が異なる場合や有罪判決がない場合も没収されるか
没収の可能性はあります。没収には裁判時の法律を適用します(台湾刑法第2条第2項)。事実上または法律上の理由で犯罪行為者を訴追できないか有罪判決を出せない場合でも、犯罪に使用された物などや犯罪収益については、単独で没収を宣告できます(第40条第3項)。
検察官が台湾刑事訴訟法第253条に基づき不起訴とし、または第253条の1に基づき起訴猶予とした場合にも、これらの物や犯罪収益の単独没収を裁判所へ申し立てられます(第259条の1)。ただし期間制限があります。禁制品と特別規定のあるものを除き、第80条の時効期間を過ぎると没収できません。没収の宣告が確定してから10年を過ぎても執行を開始・継続しなかった場合、その後は執行できません(台湾刑法第40条の2第2・4項)。
第三者の没収通知を受けた後
検察官から台湾刑事訴訟法第455条の13に基づく第三者財産の没収通知や意見陳述の機会を受けた場合、または価額追徴を保全するため財産を押収された場合(第133条第2項)は、財産の出所と取得経緯を整理できます。第三者の参加申立ては、事件の最後の事実審で口頭弁論が終結する前に必要です。期限を確認してください。
