本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
まずは雇用主(会社)に申し立てるのが基本です。相手が会社のトップ(最高責任者)であれば、直轄市や県・市の主管機関に直接申し立てることができます(職業安全衛生法第22条の3第1項)。雇用主への申立ては、原則として行為が終わってから3年以内です。相手が地位や権限を利用していた場合は、退職してから1年という期間のほうが長ければ、そちらが適用されます(準則第8条第3項)。なお、会社の調査面談では、面談を受ける人が自分で録音・録画することは禁止されています。
まず確認:法律上の「職場いじめ」とは
職業安全衛生法第22条の1第1項によると、職場いじめとは、職場で働く労働者が、同じ組織の人から職務上の立場や権限などを利用され、業務上必要かつ合理的な範囲を超える侮辱、脅し、無視、孤立などの不当な言動を繰り返し受けて、心や体の健康を害されることをいいます(日本でいうパワハラに近い考え方です)。ただし、行為が重大であれば、一度だけでも該当します。
職場霸凌防治措施準則(以下「準則」)第2条は、背景、頻度、場所、行為者の動機と目的を総合的に考えて判断するよう求めています。わざと仲間外れにする、仕事を妨げたり嫌がらせをしたりする、不合理な業務目標を割り当てる、うわさを広める、プライバシーを暴露するといった行為も、判断の材料として挙げられています。
どこに申し立てればいい?
- 原則は雇用主へ:申立ては、原則として雇用主にします(職業安全衛生法第22条の3第1項本文)。労働者が10人以上いる雇用主は、申立ての窓口を設けて、社内に公に示さなければなりません(準則第5条)。申立ては、口頭、メール、書面のどれでもできます(第8条第1項)。
- 相手が最高責任者なら:直轄市や県・市の主管機関に、書面で直接申し立てられます(職業安全衛生法第22条の3第1項ただし書、地方主管機関申訴処理辦法第7条)。最高責任者には、法人などの対外的な代表者や、それと同等の立場の人も含まれます(同辦法第2条第2項、第3条)。
雇用主は、申立てを受け取ってから10営業日以内に、受理するかどうかを書面で知らせます(準則第10条第1項)。具体的な内容がない場合や、実名や本人を特定できる情報がない場合は、受理されないことがあります(第10条第2項)。申立てでは何があったのかを具体的に書き、名前も明らかにしてください。
申立ての期限:申立て先によって少し違う
| 申立先 | 行為終了後 | 退職後 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 雇用主 | 行為の終了から3年を過ぎると受理されません(右の退職後の期間のほうが長い場合を除きます) | 相手が地位や権限を利用していた場合は、退職から1年以内 | 準則第8条第3項 |
| 地方の主管機関(相手が最高責任者の場合) | 行為の終了から3年を過ぎると受理されません(右の退職後の期間のほうが長い場合を除きます) | いじめがあった当時にその職場で働いていた場合は、退職から1年以内 | 職業安全衛生法第22条の3第2項 |
どちらも、適用される期間のうち長いほうが基準になります。違いは「退職後1年」が使える条件で、雇用主への申立てでは相手が地位や権限を利用していたこと、主管機関への申立てではいじめがあった当時に在職していたことが条件です。
申立てを受けた雇用主がとるべき措置
申立てを受けていじめを知った雇用主は、すぐに有効で適切な措置をとらなければなりません(職業安全衛生法第22条の2第1項第1号、準則第7条第1項第1号)。必要なことは、遠慮せず雇用主に伝えてください。
- 引き離しなどの措置:申立人の希望を踏まえて相手と引き離すなどの措置をとり、申立人を不利益に扱ってはなりません。
- 支援:申立人の求めに応じて、法律相談、医療、カウンセリングなどを提供するか、紹介します。
- 調整は必須ではない:調整(話し合いによる解決)は、申立人が望む場合にだけ行います。どちらかが望まないときや、調整を始めてから1か月たっても合意できないときは、調整をやめて調査を続けます(準則第13条)。
正式な申立てや調整は望まず、雇用主に事情を伝えただけの場合でも、雇用主は事実関係を確かめ、救済の方法を説明し、仕事の内容や職場を適切に調整しなければなりません(第7条第2項)。申し立てた人や申立てを手伝った人を、解雇、降格、減給などで不利益に扱うことは禁じられており(第20条、職業安全衛生法第39条第4項)、そうした処分は無効です(同条第5項)。ただし、悪意で事実をでっち上げたと証明された場合は別です。
調査の中で守られること
- 書面での通知:調査の目的、日時、場所、出席しなかった場合の扱いが書かれた通知が届きます(準則第16条第1項第1号)。
- 意見を述べる機会・対質の禁止:当事者には意見を述べ、反論する機会が与えられます。相手と直接向き合って供述を突き合わせる「対質」をさせられることはありません(第16条第1項、第3号)。
- 秘密の保持:当事者や調査に協力した人の身元が分かる情報は、調査に必要な場合などを除いて秘密にされます(第16条第1項第7号)。
- 担当者を外すよう求める(回避):調査担当者が公平でないおそれがあるときは、理由と事実を書面で示して、担当から外れるよう求めることができます(第15条第3項)。
- 決定と再審査:調査の結論は、決定から10営業日以内に書面で知らされます(第18条第3項)。納得できなければ、通知を受け取った翌日から30日以内に、書面で1回に限り再審査(申復)を求めることができます(第22条第1項)。
調査の結論が準則に違反していて、しかも調査の手続きに重大な欠陥があると認められた場合、主管機関や労働検査機関は雇用主に調査のやり直しを求めることができ、雇用主はこれを拒めません(職業安全衛生法第22条の2第5項、準則第24条)。
証拠として何を残す? 何に気をつける?
申立てには、具体的な事実と関係する証拠を示す必要があります(準則第8条第2項第3号)。まずは次のものを整理しておきましょう。
- 日付順にまとめた出来事の記録(誰が、どこで、何を言い、何をしたか、その場に誰がいたか)。
- 自分が受け取ったメッセージ、メール、仕事の割り振り、会議の案内。
- 病院やカウンセリングにかかった場合は、その記録(心身の健康が害されたことが定義の要件になっているためです)。
- システムの記録など、ほかの証拠がどこにあるか。雇用主は調査の際、関係する証拠を保全しなければなりません(第16条第1項第6号)。
録音について:通訊保障及監察法(台湾の通信傍受に関する法律)第29条第3号により、自分が会話の当事者で、不法な目的がない録音は処罰されません。一方、自分が加わっていない他人の私的な会話を正当な理由なく録音すると、刑法第315条の1や通訊保障及監察法第24条に触れるおそれがあります。適法かどうかは、個別の事情によって判断されます。
公司調查訪談時,受訪談者不得自行錄音或錄影;訪談由雇主以錄音或錄影輔助並作成紀錄(準則第16條第1項第2款)。地方主管機關的調查亦同(辦法第13條第1項第1款)。
〔非公式要約〕雇用主の調査面談では、面談を受ける人は自ら録音・録画できません。雇用主が記録します(準則第16条第1項第2号)。地方主管機関の調査にも同様の規則があります(同辦法第13条第1項第1号)。
刑事事件にもなり得るのは?
具体的な行為が刑法の要件を満たせば、別に告訴することもできます。たとえば、公然侮辱(刑法第309条)、名誉毀損(第310条)、身の安全を脅かす脅迫(第305条)、強制罪(第304条。日本の強要罪に近い罪)、傷害(第277条第1項)です。このうち公然侮辱・名誉毀損(第314条)と通常の傷害(第287条)は親告罪で、原則として犯人を知ってから6か月以内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法第237条第1項)。ただし第287条は、公務員が職務中に犯した傷害を親告罪から除いています。職場での申立ての期限よりずっと短いので注意してください。詳しくは職場いじめと刑事法をご覧ください。
どこに相談できる?
労働問題の相談や申告は、台湾労働部の1955ホットラインへ。暴力を受けたときや身の危険を感じたときは、すぐに110に電話してください。地方の主管機関に申し立てた場合は、必要に応じて支援機関の紹介や法律相談を受けられることがあります(同辦法第18条)。
刑事事件になりそうなとき、期限が迫っているとき、申立書の書き方に迷うときは、弁護士への相談も考えてみてください。このページは一般的な説明で、個別の事件についての法的意見ではありません。
