本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
台湾の「緩起訴」は、死刑・無期徒刑にあたる罪や、刑の下限が3年以上の有期徒刑(台湾の有期の自由刑)である罪を除いて、検察官が1年以上3年以下の期間を定めて起訴を見送る処分です(刑事訴訟法第253条の1)。日本の「起訴猶予」に近い制度ですが、日本の起訴猶予が期間も条件もない不起訴処分であるのに対し、緩起訴は猶予期間を定め、その間に守るべき条件を付けられる点が違います。法定の理由による不起訴(第252条)や裁量による不起訴(第253条)とも異なり、賠償、公庫への支払い、奉仕活動などの条件が付くことがあります。条件に違反したり、別の罪を犯したりすると、取り消されることもあります(第253条の2・3)。告訴人は、原則として処分書を受け取ってから10日以内に再議を申し立てられます(第256条)。どんな処分になり、どんな条件が付くかは、個々の事実によって決まります。
緩起訴と不起訴は、同じものですか?
違います。法律で定める不起訴の理由があれば、検察官は必ず不起訴にしなければなりません(第252条)。比較的軽い一定の事件では、検察官の裁量で不起訴にすることもできます(第253条)。これに対して緩起訴は、対象となる事件で1~3年の猶予期間を設け、場合によっては条件も課す処分です(第253条の1・2)。どれも捜査を終えた検察官が出す処分ですが、要件も効果も違います。
通常の不起訴や裁量による不起訴には、緩起訴のような猶予期間や守るべき条件はありません。処分が出た後は、処分書の送達や再議の手続きに進みます。
検察官が必ず不起訴にしなければならないのは、どんな場合ですか?
刑事訴訟法第252条は、次の10の場合を挙げています。すでに判決が確定している、時効が完成している、大赦があった、犯罪の後の法改正で刑罰が廃止された、告訴や請求がなければ起訴できない罪で告訴・請求が取り下げられたか期間が過ぎた、被告(台湾では起訴前の捜査対象者も含みます)が死亡した、裁判所に裁判権がない、行為が処罰の対象でない、法律上刑を免除すべき場合にあたる、犯罪の疑いが十分でない――このいずれかにあたれば、検察官は不起訴処分をしなければなりません。
これは、検察官に選択の余地がない義務的な規定です。刑法第57条の事情や公益を考え合わせて判断する緩起訴とは、性質が違います。
「裁量による不起訴」(職権不起訴)とは何ですか? 緩起訴とどう違いますか?
刑事訴訟法第376条第1項に挙げられた事件では、検察官が台湾刑法第57条の量刑事情を考え、不起訴が適当と判断すれば、不起訴にできます(刑事訴訟法第253条)。対象は、法定刑の上限が3年以下の有期徒刑、拘役または罰金だけの罪のほか、同項に挙げられた傷害、窃盗、横領、詐欺、背任、脅迫、盗品等に関する罪などの特定の罪です。軽い罪について検察官に認められた裁量です。
裁量による不起訴には、処分が出た後に、緩起訴のような観察期間や守るべき条件はありません。一方、緩起訴には1年以上3年以下の期間があり、被告に条件を守るよう命じることがあります(第253条の1・2)。
緩起訴になる条件と猶予期間は、どう決まりますか?
死刑・無期徒刑にあたる罪や、刑の下限が3年以上の有期徒刑である罪でなければ、検察官は、台湾刑法第57条の事情と公益を考え合わせて相当と判断した場合に、1年以上3年以下の猶予期間を定めて緩起訴にできます。期間は、処分が確定した日から数えます(刑事訴訟法第253条の1第1項)。
猶予期間中は公訴時効の進行が止まり、この期間は時効の期間に数えられません(同条第2項)。どんな事件でも必ず認められる制度ではありません。
被告所犯為死刑、無期徒刑或最輕本刑三年以上有期徒刑以外之罪,檢察官參酌刑法第五十七條所列事項及公共利益之維護,認以緩起訴為適當者,得定一年以上三年以下之緩起訴期間為緩起訴處分,其期間自緩起訴處分確定之日起算。(刑事訴訟法第253條之1第1項)
〔非公式要約〕対象となる罪について検察官が刑法第57条の事情と公益を考慮し、適切と認める場合に、1年以上3年以下の期間を定めて起訴を猶予できます(刑事訴訟法第253条の1第1項の趣旨)。
猶予期間中に何を求められますか? 「緩起訴処分金」とは?
検察官は、謝罪、反省文の提出、被害者への財産的・精神的な損害の賠償、公庫への一定額の支払い、奉仕活動、依存症や心の治療、被害者の安全確保や再犯防止に必要な命令などを課すことができ、いくつかを組み合わせて命じることもできます(第253条の2第1項)。このうち、同条第1項第4号に基づいて公庫に支払うよう命じられるお金を「緩起訴処分金」といいます(緩起訴處分金與認罪協商金補助款收支運用及監督管理辦法第2条第1号)。
第3号から第6号までの条件を課すには、被告の同意が必要です。被害者への賠償と公庫への支払いは、民事の強制執行の根拠にもなります(第253条の2第2項)。金額、期限、同意が必要かどうかは、処分書で確認してください。
檢察官命被告遵守或履行前項第三款至第六款之事項,應得被告之同意;第三款、第四款並得為民事強制執行名義。(刑事訴訟法第253條之2第2項)
〔非公式要約〕第253条の2第1項第3~6号の条件を命じるには被告の同意が必要で、第3・4号は民事強制執行の根拠にもなります(同条第2項の趣旨)。
緩起訴が取り消されるのは、どんなときですか?
猶予期間中に故意に有期徒刑以上にあたる罪を犯して起訴された場合、緩起訴の前に故意に犯した別の罪で、猶予期間中に有期徒刑以上の刑を言い渡された場合、課された条件に違反した場合には、検察官は職権で、または告訴人の申立てにより処分を取り消し、捜査や起訴に進むことができます(第253条の3第1項)。取り消されても、すでに履行した分の返還や賠償は求められません(第2項)。
告訴人は、不起訴や緩起訴に不服を申し立てられますか?
申し立てられます。原則として、告訴人は不起訴または緩起訴の処分書を受け取ってから10日以内に、不服の理由を書いた書面を、処分をした検察官を通じて直接の上級検察署の検察長か検察総長に出し、再議(処分の見直し)を求めることができます(第256条第1項)。
ただし、裁量による不起訴(第253条)や緩起訴(第253条の1)に告訴人自身が同意していた場合は、再議を求められません。また、緩起訴を取り消された被告も、処分書を受け取ってから10日以内に再議を求めることができます(第256条の1)。
告訴人接受不起訴或緩起訴處分書後,得於十日內以書狀敘述不服之理由,經原檢察官向直接上級檢察署檢察長或檢察總長聲請再議。但第二百五十三條、第二百五十三條之一之處分曾經告訴人同意者,不得聲請再議。(刑事訴訟法第256條第1項)
〔非公式要約〕告訴人は原則として処分書を受け取ってから10日以内に再議を請求できます。ただし、第253条または第253条の1の処分に同意していた場合は請求できません(刑事訴訟法第256条第1項の趣旨)。
処分の条件と再議期限の確認
処分書を受け取ったら、処分の種類、条件、支払う金額、同意が必要かどうか、再議の期限を確認してください。再議の期限は短いので、わからない点があれば、期限が過ぎる前にご相談ください。このページは一般的な説明であり、個別の事件についての法的意見ではありません。
