本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
私文書を偽造・変造し、公衆や他人に損害を生じさせるおそれがあれば、実際に損害が出ていなくても刑法第210条の私文書偽造罪が成立します。公文書の偽造・変造(第211条)は私文書よりも刑が重く、公務員に虚偽の内容を記載させる罪(第214条)にも別に法定刑が定められています。偽造した文書を使った(行使した)ときは、第216条により、もとの偽造や虚偽記載の罪と同じ規定で処罰され、行使したことで刑が上乗せされるわけではありません。意思を表す証明になる電磁的記録(電子データ)も、第220条により文書として扱われます。
私文書偽造罪とは?(刑法第210条)
私文書を偽造・変造し、それが公衆や他人に損害を生じさせるおそれがあれば、私文書偽造罪が成立します。法定刑は5年以下の有期徒刑(台湾の有期の自由刑)です(第210条)。
実際に損害が出ている必要はなく、損害が生じる危険があれば成立し得ます。他人の署名をまねて借用書や契約書、委任状を作る場合などが典型です。
偽造、變造私文書,足以生損害於公眾或他人者,處五年以下有期徒刑。(刑法第210條)
〔非公式要約〕刑法第210条は、公衆または他人に損害を生じさせるに足りる私文書の偽造・変造を、5年以下の有期徒刑と定めます。
公文書の偽造は、私文書と何が違う?(第211条)
違いは文書の性質です。公文書(公務員が職務上作る文書。刑法第10条第3項)を偽造・変造し、公衆や他人に損害を生じさせるおそれがある場合は、1年以上7年以下の有期徒刑で(第211条)、私文書偽造罪の5年以下より高い法定刑が定められています。一方、旅券(パスポート)などの渡航文書、免許証や許可証、品行・能力・勤務などに関する証明書や紹介状については第212条に別の規定があります。これらを偽造・変造して公衆や他人に損害を生じさせるおそれがある場合は、1年以下の有期徒刑、拘役(短期の自由刑)または9,000台湾ドル以下の罰金です。
公文書は社会から高い信頼を寄せられているため、偽造されると、特定の当事者だけでなく、役所の書類そのものへの信頼が損なわれます。法律が重い刑を定めているのはそのためです。
公務員に虚偽の内容を記載させる罪とは?(第214条)
事実でないと知りながら、公務員にその職務で扱う公文書へ記載させ、それが公衆や他人に損害を生じさせるおそれがある場合は、3年以下の有期徒刑、拘役または1万5,000台湾ドル以下の罰金です(第214条)。
公務員自身が虚偽と知りながら記載する第213条とは異なり、第214条は、内容が虚偽だと知りながら、公務員が申告に基づいて記載する仕組みを利用し、職務上の公文書に虚偽を記載させ、公衆または他人に損害を生じさせ得る場合を対象とします。公務員が法律上、真偽を実質的に審査してから記載する場合は、申告が虚偽だったというだけで第214条の罪になるわけではありません。別の犯罪に当たるかは、個別に判断されます。
明知為不實之事項,而使公務員登載於職務上所掌之公文書,足以生損害於公眾或他人者,處三年以下有期徒刑、拘役或一萬五千元以下罰金。(刑法第214條)
〔非公式要約〕刑法第214条は、虚偽と知る事項を公務員の職務上の公文書に記載させ、公衆または他人に損害を生じさせるに足りる行為を処罰します。
例:他人の名前を勝手に契約書に書いたら、どんな罪になる?
たとえば、AさんがBさんの了解を得ずに契約書にBさんの名前を署名し、Bさん本人の意思で作られた契約書のように見せかけたとします。それがBさんや第三者に損害を生じさせるおそれのあるものであれば、第210条の私文書偽造罪に当たる可能性があります。
さらにAさんがその契約書を相手に示して権利を主張したり、実際に使ったりすれば、第216条の偽造私文書行使罪となり、私文書偽造罪と同じ法定刑で処罰されます。台湾の実務では、偽造は行使に吸収され、行使の罪ひとつだけが成立するとされています。「偽造」と「行使」で二重に処罰されるわけではありません(これは裁判実務の考え方です)。
偽造と「行使」は何が違う?(第216条)
第210~215条に挙げられた文書を使った(行使した)場合は、偽造・変造、虚偽記載、公務員に虚偽を記載させる罪の規定に従って処罰されます(第216条)。つまり、行使という行為そのものに、もとの罪と同じ法定刑が適用されます。
実際には、偽造した本人がその文書を使うのが通常です。その場合は、第216条の行使の罪として評価され、「行使」という行為がひとつ増えたからといって、刑が上乗せされたり二重に処罰されたりすることはありません。
LINEのやり取りや電子ファイルも「文書」になる?(第220条)
第220条によれば、紙や物に書かれた文字・記号・図画・写真は、慣習や特約からみて意思を表す証明になるものであれば、文書として扱われます。録音、録画、電磁的記録も、機器やコンピュータで再生・表示される音声・映像・記号が同じように意思を表す証明になるなら、文書に含まれます。
そのため、電子署名をした書類、チャットの履歴、メールなども、この条件を満たせば刑法上の文書と評価され、偽造や行使の規定が適用されることがあります。
実際に損をした人がいなければ、罪にならない?
いいえ、実際の損害は必要ありません。条文の要件は、公衆や他人に「損害を生じさせるに足りる」ことです。損害が生じる可能性があれば要件を満たし、被害者が実際にお金を失っている必要はありません。
ここでいう損害には、財産だけでなく、身分や名誉など財産以外の利益が害されるおそれも含まれます。その可能性があるかどうかは、裁判所が個別の事実から判断します。すでに地方検察署から呼出状が届いている場合は、検察での取調べへの準備もあわせてご覧ください。
文書の原本と作成・使用の経緯
自分が署名した書類を誰かに偽造されたかもしれないとき、反対に偽造を疑われているとき、警察や検察から呼出しを受けたときは、話をする前にご相談ください。その文書が法律上どう扱われるのか、ご自身の行為がどう評価されるのかを一緒に確かめます。このページは一般的な説明で、個別の事件についての法的意見ではありません。
