本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
他人に代わって現金を引き出し、受け渡す行為は、刑法第339条の4の加重詐欺罪と、洗錢防制法第19条の一般資金洗浄罪にあたる可能性があります。さらに詐欺犯罪危害防制條例第43条により、被害者がだまし取られた額に応じて刑が段階的に重くなります。出頭通知や警示口座への指定だけでは、起訴の有無は判断できません。起訴状や検察署からの通知などで、事件の進行状況を確認する必要があります。自首し、その日から6か月以内に被害者との調停・示談で決めた金額を全額支払うなどの条件を満たせば、第46条により刑が減軽または免除されることがあります。捜査と裁判のすべての段階で自白し、決められた期間内に支払った場合は、第47条による減軽が問題になります。実際に適用されるかどうかは、事案ごとに判断されます。
口座を渡しただけでも、罪になりますか?
なる可能性があります。洗錢防制法第22条第1項は、銀行口座やアカウントを他人に渡して使わせることを原則として禁じています。違反すると、事情に応じて警察から行政上の告誡(警告処分)を受けるか、見返りを約束・受領した場合や合計3つ以上の口座を渡した場合などには、刑罰の対象になります。これとは別に詐欺幇助や資金洗浄の罪にもあたるかどうかは、具体的な事実によって決まります。詳しくは口座提供と詐欺幇助の境界をご覧ください。なお、最高法院(台湾の最高裁)の刑事大法廷は108年度台上大字第3101号裁定で、見知らぬ人にキャッシュカードと暗証番号を渡しただけでは、資金洗浄罪の正犯にはならないと判断しました。ただし、その口座が犯罪で得たお金の受取りや引出しに使われるかもしれないと分かっていながら渡した場合は、一般資金洗浄罪の幇助犯にあたるとしています。この裁定は改正前の洗錢防制法第14条第1項を対象としています。現在の一般資金洗浄罪は第19条、口座の交付・提供に関する規定は第22条です。個別の行為については、行為時の法律と現行法の構成要件を区別し、どの規定が適用されるかを判断します。個別の事件は、具体的な事実によって判断されます。
現金を引き出して渡す役をすると、どんな罪になりますか?
お金が詐欺でだまし取られたものだと知っていた場合はもちろん、そうかもしれないと思いながら引出しや受渡しを手伝った場合(未必の故意)も、3人以上で共同して行ったなど刑法第339条の4第1項の要件にあたれば、加重詐欺罪に問われる可能性があります。法定刑は1年以上7年以下の有期徒刑(台湾の有期の自由刑)で、100万台湾ドル以下の罰金を併せて科されることもあります。
また、他人が特定の犯罪で得たお金を受け取る、持っておく、使う、あるいはその出どころを隠す手助けをすると、洗錢防制法第19条の資金洗浄罪にもあたり得ます。対象となる財物・財産上の利益が1億台湾ドル未満なら6か月以上5年以下の有期徒刑と5,000万台湾ドル以下の罰金、1億台湾ドル以上なら3年以上10年以下の有期徒刑と1億台湾ドル以下の罰金で、罰金は必ず併せて科されます(洗錢防制法第19条第1項)。加重詐欺と資金洗浄をそれぞれ処罰するのか、重いほうの罪で処断するのかは、具体的な行為の内容から判断されます。最高法院刑事大法廷の2022年2月23日の裁定(台上大字第1797号)は、詐欺グループで引出しを担当するメンバーが、グループの管理する他人名義の口座(人頭口座)から被害者が振り込んだお金を引き出した時点で、一般資金洗浄罪が成立すると判断しています。加重詐欺罪との関係は、事案ごとに判断されます。この裁定は改正前の洗錢防制法第14条第1項を対象としています。現在の一般資金洗浄罪は第19条に定められており、具体的な行為については行為時の法律と現行法の構成要件を区別して判断します。主文のうち第三審への上訴理由に関する部分は、ここでは取り上げていません。
被害額が大きいと、刑はどこまで重くなりますか?
詐欺犯罪危害防制條例第43条は、刑法第339条の4の罪で被害者に交付させた財物・財産上の利益の額に応じて、刑を次のように重くしています。100万台湾ドル以上なら3年以上10年以下の有期徒刑(3,000万台湾ドル以下の罰金を併科できる)、1,000万台湾ドル以上なら5年以上12年以下(同3億台湾ドル以下)、1億台湾ドル以上なら7年以上(同5億台湾ドル以下)です。
基準になるのは被害者がだまし取られた額で、受け子本人が受け取った報酬ではありません。実際にいくらと認定されるかは、証拠に基づいて裁判所が判断します。
犯刑法第三百三十九條之四之罪,使人交付之財物或財產上利益達新臺幣一百萬元者,處三年以上十年以下有期徒刑,得併科新臺幣三千萬元以下罰金。使人交付之財物或財產上利益達新臺幣一千萬元者,處五年以上十二年以下有期徒刑,得併科新臺幣三億元以下罰金。使人交付之財物或財產上利益達新臺幣一億元者,處七年以上有期徒刑,得併科新臺幣五億元以下罰金。(詐欺犯罪危害防制條例第43條)
〔非公式要約〕詐欺犯罪危害防制條例第43条は、刑法第339条の4の罪で交付させた額が100万台湾ドル以上なら3年以上10年以下、1,000万台湾ドル以上なら5年以上12年以下、1億台湾ドル以上なら7年以上の有期徒刑とし、それぞれ3,000万・3億・5億台湾ドル以下の罰金を併科できると定めます。
「高収入バイト」の求人が、なぜ受け子集めに使われるのですか?
詐欺グループは、相場より高い報酬と、はっきりしない仕事内容(「銀行間の資金調整」「集金の補助」など)をうたった求人で、お金に困っている人を集めます。実際にさせるのは、口座を渡すことや、現金を引き出して受け渡すことです。
銀行口座やキャッシュカード、暗証番号を求められたり、コンビニやATMで現金を引き出して知らない人に渡すよう指示されたりしたら、危険信号です。すぐに作業をやめ、雇い主が何者かを確かめてください。不審な出金・送金の指示を受けたら作業を止め、求人内容や相手とのやり取りを保存してください。
警察から通知が来た、口座が警示口座になった。もう起訴されたということですか?
通知や指定だけでは、起訴の有無は分かりません。出頭通知は、捜査の段階で警察が関係者を呼んで話を聞くためのものです。警示口座の指定は、司法警察機関が詐欺の捜査のために金融機関に通知し、詐欺に使われた疑いのある口座の取引をすべて止める措置です(詐欺犯罪危害防制條例第9条第4項)。起訴の有無と事件の段階は、検察署の通知などで確認してください。
起訴するかどうかは、捜査を終えた検察官が証拠をもとに決めます。通知が届いたら、取調べの前に事実関係と資料を整理しておくことが大切です。警察への出頭通知の解説と、その後に検察から呼出状が届いた場合の検察への出頭準備もご覧ください。
取調べのとき、どんな権利がありますか?
刑事訴訟法第95条により、捜査機関は取調べを始める前に、疑われている犯罪の内容とすべての罪名、黙っていてよいこと、弁護人を選べること、自分に有利な証拠の調査を求められることを告げなければなりません。
弁護人は同法第245条に基づいて、検察官や警察の取調べに立ち会い、メモを取ったり意見を述べたりできます。立会いを制限・禁止できるのは、証拠隠滅や共犯者・証人との口裏合わせのおそれがあるなど法律が定める理由がある場合や、捜査の秩序を乱す場合に限られます。
訊問被告應先告知下列事項:一、犯罪嫌疑及所犯所有罪名……二、得保持緘默,無須違背自己之意思而為陳述。三、得選任辯護人……四、得請求調查有利之證據。(刑事訴訟法第95條第1項)
〔非公式要約〕刑事訴訟法第95条第1項は、取調べ前に嫌疑・すべての罪名、黙秘、弁護人の選任、有利な証拠の調査請求を告げることを定めます。
自首や示談をすれば、刑は軽くなりますか?
刑を軽くしたり免除したりする規定はありますが、使えるかどうかは裁判所が判断します。詐欺犯罪危害防制條例第46条では、詐欺の罪を犯した後に自首し、自首した日から6か月以内に、被害者との調停・示談で合意した金額を全額支払えば、刑を減軽または免除できるとしています。さらに、自首がきっかけとなって、詐欺組織を立ち上げた人物や、組織を取り仕切り・操り・指揮する人物が検挙された場合や、組織が被害者全員から得た財物・財産上の利益をすべて差し押さえることができた場合は、刑を免除できます(同条第2項)。
第47条第1項では、捜査と各審級の裁判のすべてで自白し、検察官の捜査で初めて自白した日から6か月以内に、被害者との調停・示談で合意した金額を全額支払った場合、刑を減軽できるとしています。それがきっかけとなって、組織を立ち上げた人物や、組織を取り仕切り・操り・指揮する人物が検挙されたり、組織が被害者から得た財物などをすべて差し押さえられたりした場合は、減軽または免除ができます(同条第2項)。実際に使えるかどうかは、事実関係と時系列を弁護士と一緒に確かめたうえで判断する必要があります。
出頭通知が届いた、口座が警示口座になった、加重詐欺や資金洗浄の疑いをかけられている――こうした場合は、警察や検察で話をする前にご相談ください。このページは一般的な説明であり、個別の事件についての法的意見ではありません。