本記事は台湾法に基づきます。相談は中国語で行いますが、通訳の手配についてご相談ください。
刑事事件でいう示談は、台湾の法律上は民法の「和解」にあたり、争いを終わらせるか防ぐために当事者がお互いに譲り合う契約です(民法第736条)。親告罪であれば、告訴人は第一審の弁論が終わる前に告訴を取り下げることができますが、取り下げた後にもう一度告訴することはできません(刑事訴訟法第238条)。適法に告訴が取り下げられた場合、捜査中であれば検察官が不起訴処分をし、起訴後であれば裁判所が不受理の判決を言い渡します。親告罪でない犯罪は、示談だけでは終わりません。賠償や示談は、犯行後の態度として量刑で考慮されることがあるほか(刑法第57条第10号)、執行猶予の条件(第74条第2項第3号)や、緩起訴(一定期間、起訴を猶予する台湾の制度)の条件(刑事訴訟法第253条の2第1項第3号)にも関わります。示談をするか、どんな条件にするかは当事者が決めることで、結果をここで予測することはできません。
法律上、示談(和解)とはどういうもの?
民法第736条の和解は、争いを終わらせるか、争いが起きるのを防ぐために、当事者がお互いに譲り合う契約です。成立するかどうか、どんな条件にするかは、双方の合意で決まります。
これはあくまで民事上の契約です。刑事の告訴を取り下げるかどうかや、検察官や裁判所がその後どう判断するかとは、別の問題として考える必要があります。
稱和解者,謂當事人約定,互相讓步,以終止爭執或防止爭執發生之契約。(民法第736條)
〔非公式要約〕民法第736条は、当事者が互いに譲歩し、紛争を終わらせるか防ぐ契約を和解と定義します。
親告罪で示談し、告訴を取り下げたらどうなる?
告訴がなければ起訴できない罪(親告罪)では、告訴人は第一審の弁論が終わるまで告訴を取り下げることができます。取り下げた人は、もう一度告訴することはできません(刑事訴訟法第238条)。私的な示談書を交わすだけで、告訴が自動的に取り下げられるわけではありません。通常は、告訴人が別に検察官か裁判所へ、書面か口頭で取下げを伝えます。ただし、鄉鎮市の調解(自治体の調停)には例外があります。親告罪の事件で、捜査中または第一審の弁論終結前に調解が成立し、当事者が告訴等の取下げに同意する旨を調解書に記載して裁判所の承認を受けた場合は、調解成立時に告訴または自訴を取り下げたものとみなされます(鄉鎮市調解条例第28条第2項)。
親告罪で告訴(または請求)が取り下げられると、検察官は不起訴処分をしなければなりません(第252条第5号)。すでに起訴されて裁判所で審理中であれば、裁判所は不受理の判決(日本の公訴棄却に近いもの)を言い渡します(第303条第3号)。
告訴乃論之罪,告訴人於第一審辯論終結前,得撤回其告訴。撤回告訴之人,不得再行告訴。(刑事訴訟法第238條)
〔非公式要約〕第238条は第一審の口頭弁論終結前の取下げを認め、取り下げた人による再告訴を禁じます。
親告罪でない犯罪も、示談すれば事件は終わる?
終わりません。刑事訴訟法第238条の告訴取下げの規定が適用されるのは、親告罪だけです。親告罪でない犯罪では、当事者が示談をしたり、被害者が「処罰は望まない」と伝えたりしても、それで刑事事件が自動的に終わることはありません。検察官は捜査で集めた証拠をもとに起訴するかどうかを決め、裁判所も法律に従って審理を続けます。
ただし示談の成立は、刑事訴訟法第376条第1項に挙げられた事件に限って認められる第253条の裁量的な不起訴、第253条の1による緩起訴、刑法第57条第10号の量刑、第74条の執行猶予を判断するときに考慮されることがあります。いずれも、示談をすれば必ずそうなるというものではありません。これとは別に、詐欺犯罪危害防制条例の対象となる詐欺犯罪には、法定の減軽・免除規定があります。現行第46条第1項は、犯行後に自首し、その日から6か月以内に被害者との調解・示談で定めた全額を支払った場合、刑を減軽または免除できると定めています。第47条第1項は、捜査と各審級の裁判でいずれも自白し、検察官の捜査中に初めて自白した日から6か月以内に合意額の全額を支払った場合、刑を減軽できると定めています。単に示談書を交わすだけで適用されるわけではなく、行為時の法律と改正後の法律の比較も必要です。
示談は量刑や執行猶予にどう影響する?
裁判所は、行為者の責任を基礎に、あらゆる事情を考えて刑を決めます。その事情のひとつが犯行後の態度です(刑法第57条第10号)。示談が成立していることや、被害者に賠償したことは、この判断で考慮される場合があります。
また裁判所は、執行猶予(台湾でいう緩刑)を付けるときに、被害者の財産的損害や非財産的損害(精神的損害など)について相当な額を支払うよう、被告人に命じることができます(第74条第2項第3号)。刑を軽くするか、執行猶予を付けるかは、事件全体の事情から判断されます。
三、向被害人支付相當數額之財產或非財產上之損害賠償。(刑法第74條第2項第3款)
〔非公式要約〕刑法第74条第2項第3号は、被害者への相当額の賠償を執行猶予の条件として命じることを認めます。
緩起訴の条件と示談はどう関係する?
検察官は緩起訴の条件として、一定の期間内に被害者へ財産的・非財産的損害の賠償として相当な額を支払うよう、被告に命じることができます(刑事訴訟法第253条の2第1項第3号)。台湾では、起訴される前の捜査段階でも、検察官の捜査を受けている人を「被告」と呼びます(日本の「被告人」より広い呼び方です)。これとは別に、同項第4号に基づいて公庫(国や自治体の金庫)に納めるお金を「緩起訴処分金」といいますが、これは被害者への賠償ではありません(緩起訴處分金與認罪協商金補助款收支運用及監督管理辦法第2条第1号)。
こうしたお金の支払いを条件にするには、被告の同意が必要です。同意した条件は、民事の強制執行の根拠(債務名義)にもなります(第253条の2第2項)。検察官が本人の同意なく一方的に押しつけられる条件ではありません。
被害者は示談に応じなければならない?
いいえ。示談(和解)は、お互いの譲り合いで成り立つ契約です(民法第736条)。相手から申し出があったからといって、被害者が金額に同意したり、告訴を取り下げたりする義務はありません。事件の事情やご自身の損害をよく考えてから決めてかまいませんし、申し出を受けたその場で返事をする必要もありません。
告訴を取り下げた後で、やはり告訴し直せる?
できません。親告罪の告訴を取り下げた人は、同じ事件でもう一度告訴することはできません(刑事訴訟法第238条第2項)。取り下げる前に、その罪が本当に親告罪なのか、示談の条件がきちんと履行されたのかを確認してください。どの罪に当たるのかや、取り下げた後どうなるのかがはっきりしないときは、示談書に署名したり取下げを伝えたりする前に確かめましょう。
支払い条件と告訴取下げの時期
示談の申し出を受けたとき、告訴の取下げを考えているとき、緩起訴の条件として支払いを求められたときは、それぞれ法的な効果が違います。署名や取下げの前に、書面の文言と罪の種類を確かめておきましょう。このページは一般的な説明で、個別の事件についての法的意見ではありません。
